「お坊ちゃん体質、修羅場経験なしのツケが回った」安倍晋三が投げ出した“第1次政権”の問題点

「昭恵夫人は、夫の後を3歩下がって歩くというタイプではない」

退陣直後、ある政治部デスクは言っていた。

「安倍の第1次政権“投げ出し”は、結局のところ経験不足からくる未熟さが、そうさせた部分も大きかった。
スタートから中川秀直幹事長、中川昭一政調会長との呼吸が合わずで、所属する森派内で有望株といわれた福田康夫とも、まったくソリが合わなかった。
また、重要閣僚などの実務経験のなさ、根回し不足も、これに追い打ちをかける格好になった。残念ながら“お坊ちゃん”体質、修羅場経験なしのツケが回った第1次政権と言えた」

また、当時の自民党担当記者はこうも言っていた。

「じつは、安倍自身も、当選5回で天下取りにチャレンジするのは時期尚早と分かっていた。安倍の総裁選出馬に対しては、所属の森派内でもベテランを中心に異論が多かった。
しかし、彼は父親の無念を晴らすのは、若き幹事長として人気の高い、いまが数少ない好機として捉えていた。
ただし、一方で妻の昭恵は慎重で、『首相へのチャレンジは2〜3年くらい先でいいんじゃないかしら』と進言したといわれていた」

その安倍と妻・昭恵について、夫婦をよく知る自民党の若手議員は言っていた。

「昭恵夫人は、夫の後を3歩下がって歩くというタイプではない。その点では、歴代首相のなかで“異色”でした。
仲のよい友達のような夫婦で、安倍さんは会食などの予定がない場合は、真っすぐ私邸に戻ることが多く、昭恵夫人との時間を過ごすのが、唯一の”なごみ”の時間に見えました。
昭恵夫人は『晋ちゃんは、まじめ、誠実、楽しい人ですよ』と言っていました」

安倍と妻・昭恵の結婚生活は、多くのエピソードに彩られているのである。

(本文中敬称略/この項つづく)

「週刊実話」11月27日号より

小林吉弥(こばやし・きちや)

政治評論家。早稲田大学卒。半世紀を超える永田町取材歴を通じて、抜群の確度を誇る政局・選挙分析に定評がある。最近刊に『田中角栄名言集』(幻冬舎)、『戦後総理36人の採点表』(ビジネス社)などがある。