幻のラーメン屋『居酒屋×ラーメン 真珠』店主インタビュー「ラーメンで生きていくとか、天下を獲るなんて野心は一切ないんです」

今年10月に生姜提供された、新潟・長岡名物の生姜醤油ラーメン
村瀬秀信氏による人気連載「死ぬ前までにやっておくべきこと」、今回は“幻のラーメン店”店主・谷川進氏のインタビュー(前編)をお届けする。ラーメンが特別好きではないという店主は、月一開店のお店をどのように人気店にしていったのか――。

ラーメン作りのキッカケはバイト先の店長だった

東京都渋谷区、京王線笹塚駅から徒歩10分。十号通り商店街を抜けた閑静な住宅街の一角に、月に一度だけ秘かに開く、地元の人たちの間で噂になる幻のラーメン屋があるという。

『居酒屋×ラーメン真珠』
 
月イチながら行列必至のこの店の主人・谷川進は、この道25年の雰囲気ある職人風。全国約2万4000軒、生まれた傍から消える群雄割拠のラーメン界で谷川は25年間、ラーメンを作り続けた男である。

だが、店は持たない。いわゆる“自作ラーメン”の人である。

「はい! 仕事は会社員です。ラーメンは20代の頃から家で作り始めて、完全に趣味の延長ですね。お父さんがそば打ちにハマるような感覚で、気がつけばどっぷりハマってしまってもう25年ぐらいになりますかね。
脱サラしてラーメンで生きていくとか、この味で天下を獲るなんて野心は一切ないんですよ。ただ美味しいラーメンができてしまったので、間借りで月に一度だけというスタイルで店を出して、そこで食べてもらうというね。
現在の『真珠』で4軒目です。コロナが明けた2023年から『OURDAY』というクラフトビールのお店のレンタルキッチンを借りてやらせてもらっています」

きっかけは本当に些細なことだった。20歳のときにバイトしていた飲食店の店長が有名店の料理の味をコピーして作ることが好きで、𠮷野家の牛丼などを再現しては食べさせてくれていた。

料理はキライではなかった谷川は、そこにインスパイアを受けて、唯一店長が作らなかった「ラーメンを作ってみたい」という欲望が持ちあがった。

とはいえ、当時はネットも黎明期。ラーメンの作り方など今ほど簡単に調べることはできない。

とりあえず骨を煮込むのだろうと思いスーパーでスペアリブや大量の野菜を買いぶち込んで煮てみると、これが意外に美味しいスープになった。しかし醤油を入れても“何か”が足りない。それは一体、何なのか。

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