“驕り”が災いし33歳で引退を表明 4代目ミスタータイガース掛布雅之が歩んだ“転落”と“雪どけ”

野球殿堂博物館の公式サイトより

阪神タイガースは今季、独走でリーグ優勝を果たし、CSを突破。2年ぶり8度目の日本シリーズ進出を決めたが、どこか物足りないのは「ミスタータイガース」と呼ばれる超スター選手がいないこと。4代目ミスタータイガース・掛布雅之の素顔を元スポニチ担当記者が初めて明かす。今回は4代目掛布雅之の逸話の後編だ。

取り調べでは「俺は阪神の掛布だぞ!」

1985年の阪神日本一は、結果的に掛布雅之にとって最後の輝きとなってしまった。

翌年に受けた死球の影響で成績は低迷。掛布自身も「張り詰めていた緊張の糸が切れ、怪我を言い訳にする弱い自分が出てきてしまった」と語っている。

さらに、ある事件が追い打ちをかけてしまう。1987年のペナントレースを目前に控えた3月、友人の結婚式に出席した掛布はその帰路、兵庫県警高速道路警察隊に飲酒運転の現行犯で逮捕されてしまう。

当時であれば、逮捕までには至らず内々で処理されてもおかしくない事案だった。

阪神の選手がこうしたケースで見逃されたことは山ほどあり、田淵幸一が運転する車に筆者も同乗していた際、スピード違反で停車させられた。田淵の顔を見た警官は「田淵さんでしたか。次からは気を付けてくださいね」とお目こぼししてもらった現場に居合わせたことがある。

関西における阪神タイガースの人気はそのくらい熱狂的で、多少のことなら許されていた。まして掛布は誰もが認めるタイガースの大スターである。

だが、そうはならなかった。掛布は取り調べに素直に応じようとせず、それどころか警官に「俺は阪神の掛布だぞ!」と悪態をついたのだ。

取材で話を聞いた警察関係者も「態度次第では大事にならなかったのに、あのときの掛布にはうぬぼれがあったんでしょう」と語っていたように、掛布は自らの振る舞いで事態を大きくしてしまった。ミスタータイガースであることの“驕り”が最悪の形で露呈してしまったわけだ。

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