神戸女性刺殺事件は現代社会の病巣 増加する「面識なし・関係不明」犯罪の恐怖

「好みのタイプで、2日ほど後をつけていた」

谷本容疑者は2023年春ごろから東京都新宿区の運送会社でドライバーとして勤務し、同区内の4畳半の社員寮に住んでいたという。そして夏季休暇を取り、事件の3日前から、以前住んでいた神戸市中央区内のホテルに宿泊していた。

谷本容疑者は調べに対し、「好みのタイプだったので、2日ほど前から後をつけていた。殺意を持っていたかどうか分からないが、ナイフで刺したことは間違いない。全く知らない人」などと供述しているという。

谷本容疑者は過去に2度、ストーカー規制法違反などで有罪判決を受けている。1度目は’20年12月。別の女性につきまとったとして神戸簡裁から罰金の略式命令を受けた。

2度目は’22年9月。同年1~5月に神戸市内で複数回、また別の女性につきまとって首を絞めるなどしてケガを負わせていたとして、神戸地裁から懲役2年6カ月執行猶予5年の判決を受けていた。

いずれも、今回と同様、オートロック式の自動ドアをすり抜けてマンション内に侵入する「共連れ」という手口を使っている。今回の事件は、執行猶予期間中に起こしていた。

事件を巡っては、「共連れ」への注意喚起を促す報道が相次いだが、「共連れ」を自衛するだけで、事件が防げたかどうかは分からない。警察力の強化や法規制など、さまざまな対策が必要だ。

9月4日、神奈川県警のストーカー殺人事件に対する大量処分発表があった。

川崎市の岡崎彩咲陽さん(当時20歳)が昨年末、元交際相手につきまとわれた後に殺害された事件の対応を巡り、神奈川県警が内部調査を実施。不適切な対応があったことが判明したとの検証結果が公表されている。

岡崎さんや家族から相談があったにもかかわらず、危険性や切迫性を過小評価し、組織的な初動対応を取っていなかったことが明らかになったのだ。