全国の自治体が新型コロナのワクチン接種に忙殺されているにもかかわらず、厚生労働省は飲食業者に対する罰則付きの『HACCP(ハサップ)完全義務化』を6月1日から実施した。
これに対して飲食業者だけでなく、コロナ対策やワクチン接種で長時間労働を強いられている各自治体の保健所からも、「非常時にふざけるな!」という怒りの声が上がっている。
HACCPとは、米国で始まった食品に対する衛生管理に関する手法だ。飲食業者に新たに自らの店の衛生管理計画と手順書を作成させ、その内容を従業員に周知させる。毎日、衛生管理の実施状況を記録し、これを保存しなければならない。義務を怠れば罰則が適用される。
「昨年7月に予定されていた東京五輪開催による食品の輸出促進を見込んで、昨年6月からのHACCP義務化が決まりました。しかし、五輪は1年延期。その期間は猶予となった。日本の飲食店の食品衛生管理が、国際水準に達していることを世界にアピールしたい。そういった政府の目論見が背景にあります」(食品アナリスト)
疲弊しきっている各自治体の保健所
厚労省のHACCP導入については懸念があった。作業があまりにも煩雑すぎるため、コロナ禍で経営難に陥った店や高齢者が営む店などは、「これを機会に畳む飲食店が急増する」と危惧されているのだ。
一方、HACCP導入は、飲食業を担当する各自治体の保健所も迷惑千万。コロナ患者の対応や、菅内閣がハッパをかける「7月中に高齢者のワクチン接種を終わらせる」という無理難題で、現場は疲弊しきっているからだ。
「自治体によっては、専任の食品衛生監視員がいない保健所がいくつもある。いたとしても、コロナ対応やワクチン接種の作業に駆り出されて、それどころではないのが実情。にもかかわらず、厚労省は〝保健所の体制は厳しいが、できる範囲内で指導監督は各自治体の中でやってもらうしかない〟と、HACCP完全義務化を延期しなかった。ふざけた話です」(同)
コロナ禍で苦しむ飲食店や保健所職員のためにも、HACCP義務化導入こそ延期すべきだ。
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