「日本の面白さを再認識させる」地方観光の変革を目指す“観光王”マウンティオの人生を賭けた野望

「顔を上げて新しい一歩を、踏み出そうじゃないか」

やがて青空に入道雲の種が芽吹く頃。マウンティオのYAMAが閉鎖するというニュースを風の便りで聞いた。観光王…大丈夫なのだろうか。不安になってnoteを漁ってみると、そこには“絶望”についての檄文が認められた。

「人生に絶望なんてものはない。大きな悲劇が起きてもその痛みは時間が流れ、景色が変わってゆけば旅の空に消えてゆく。むしろ、変わり映えない息苦しい日常に埋没していることの方が地獄だろう。
同じ場所、同じ人々と同じような会話を繰り返し、同じ不安の中で眠りにつく。そんな日常は俺たちの心を知らず知らずのうちに疲弊させていく。環境を変えることの力強さを、俺たちはもっと信じていい。
さあ、顔を上げて新しい一歩を、踏み出そうじゃないか。人生という名の終わらない旅路は、いつだって、俺たち自身の足元から始まるのだから。ピピース」

マウンティオは今も旅の空にいる。家族を失い、事業が閉鎖に追い込まれても、日本の、観光地の可能性を見出す旅を続けている。それはきっと幸せなことなのだろう。

誰にはばかることなくマウンティオという人生を貫けること。社会という足枷を外し、いつか炎上しそうでスタッフをひやひやさせる物言いにも気を配らずに観光地の好きなことを好きなだけ発信できる。

「日本の観光王になる」と信じ切っている男は、その旅が終わる日までに何を為せるのか。そんなことを考えていると旅先のホーム、スナックのカウンター、観光案内所の向こう側に、真夏の蜃気楼のように揺らめく軍帽にアビエーターサングラスで葉巻をくゆらす男の姿が見えた気がした。

「日本にはつまらない場所など一つとしてなかった。だが、今、ローカルに元気がない。地元の人ほど、その本当の魅力に気付いていないからだ。
俺はそういう人たちに『この土地に生まれて良かった』と思ってもらえるよう、日本の面白さを再認識するための表現活動を死ぬまで続けていく。
外国人観光客とインスタ頼みの観光地にできるわけがないって? いいや、できるさ。なぜなら、俺は観光王だからだ。ピピース」

(完)

取材・文/村瀬秀信

「週刊実話」9月18日号より