「神様が創った試合」高校野球史上最高視聴率29.4%を叩き出した箕島vs星稜(1979年)の死闘

阿久悠が「最高試合」と評価した箕島vs星稜

1979年(昭和54年)8月16日、第61回全国高校野球選手権大会の3回戦。この日の第4試合、箕島(和歌山)対星稜(石川)戦は、高校野球を愛した作詞家・阿久悠が「最高試合」と評し「神様が創った試合」と呼ぶ人もいるほど球史に残る死闘として今も語り草だ。

午後4時6分、試合開始。春の優勝校の箕島・石井毅、星稜・堅田外司昭両エースの投げ合いで同点のまま延長に突入すると、まるで漫画のような劇的な展開が次から次に待ち受けていた。

夜のとばりが降りナイターになった12回表、星稜は待望の追加点。箕島のエラーによる1点だった。その裏の箕島の攻撃も簡単に2アウト。最終打者になるかもしれない嶋田宗彦は監督の尾藤公にこう言った。

「監督、ホームランを狙っていいですか」

嶋田は1番打者で本来ホームランバッターではないのだが、この申し出に尾藤は間髪入れず「よし、狙え!」。

このやり取りについて後に嶋田は「ホームランを狙うと言ってダメでも、それはそれで笑い話になると思った」と振り返っているが、宣言通り同点本塁打が飛び出したのだ。これで2対2。

14回裏、今度は箕島の攻撃で思いもかけないプレーが飛び出す。1死三塁、絶好のサヨナラのチャンス。尾藤がいつスクイズのサインを出そうか頭を巡らせていたとき、三塁審判が突如「アウト」のコール。

何と星稜の隠し玉が決まった瞬間だった。

16回表に星稜が1点を勝ち越し3対2。その裏の箕島の攻撃は2死ランナーなし。再び絶体絶命に追い込まれた箕島だが、ここで2度目の奇跡が起こる。