「神様が創った試合」高校野球史上最高視聴率29.4%を叩き出した箕島vs星稜(1979年)の死闘

阪神甲子園球場(C)週刊実話Web
【史上最高の高校野球・前編】
8月5日から夏の全国高校野球選手権が始まるが、今年で107回を数える大会史上「最高の試合」と呼ばれ、死闘に次ぐ死闘を繰り広げたのが、1979年に行われた箕島(和歌山)対星稜(石川)戦だ。
その激闘の模様を、ジャーナリストの岡本萬尋氏が幼き日の記憶とともに振り返る。(全2回中の2回目)

一家はテレビの前から一歩も動けなくなってしまった

夏休みも折り返し点を過ぎたその日の夜、少年(当時9歳)の家では珍しく外食の予定があった。

家族は夕方、父親が仕事から帰宅するまでの暇つぶしにとテレビで高校野球中継を見始めた。

その年の春の優勝校が登場する試合だったが、地元勢でもなく特に熱心に見ていたわけではなかった。

ところが、それは途中から壮絶なゲームとなった。1対1のまま延長戦に突入、先行チームが勝ち越すたびにその裏、春の王者が奇跡的なホームランで追いつく。

全く先が読めない展開に、途中で帰宅した父親も含め、一家はテレビの前から一歩も動けなくなってしまったのだ。

外食予定だったから母親は夕飯の準備をしていない。時計は午後7時を回り15回、16回…と延長戦が進んでいくにつれ一家のお腹はグウグウと鳴り始めたが、誰もテレビを消して出かけようとは言い出さなかった。

そして一家は、とうとう空腹を抱えたまま延長18回、3時間50分の試合を幕切れまで見届けてしまった。

試合終了は午後7時56分、すぐに家を飛び出し大幅遅れで飛び込んだ近所の寿司屋では、先客たちがたった今終わったばかりの凄まじい試合の話で持ち切りだった――。

46年前の筆者の実体験だが、同じように中継に釘付けになった人々は日本中に数多いたようだ。試合の後半を中継したNHK教育テレビ(現Eテレ)の視聴率29.4%は同チャンネルの歴代最高記録として、半世紀近くたった今もなお破られていない。