夏井いつき先生『プレバト!!』11年の歴史を回顧「ジュニアさんに『真面目な視点が素晴らしい』と言うとイヤな顔されます(笑)」

「大人が一番スルッと入ってきてくれるのが悪態俳句」

夏井いつき (C)週刊実話Web
──つまり、どんな状況も楽しめるということ?
夏井「どんな状況も俳句のタネになり得るということです。これは俳句のたくさんある効果のうちの一つで、皆さん無条件に『世の中から退屈がなくなった』とおっしゃいます。
例えば、人に待たされてイライラすることってあるじゃないですか。でも、俳句をやりだした人は、待たされている状況が俳句のタネだと思うわけですよ。
相手はどうして遅れているのか、想像することもタネになりますし、前を通り過ぎていく人も、駅の向こう側の空にせり出してきた雨雲もタネになる。
待ち時間が一変して、有意義な時間になるんですよ」

──ストレスが溜まってる読者も多いので、それはいい情報かもしれません。
夏井「そういう人には『悪態俳句』がおすすめです。実は大人が一番スルッと入ってきてくれるのが、悪態俳句なんです」

──具体的にどういう俳句ですか?
夏井「俳句は五・七・五でしょ。頭の五と七、または下の七と五で、悪態をつけばいいだけ。
職場のムカつく上司、イライラさせるような後輩、ウマが合わない同僚…職場にそんな人が1人や2人、必ずいるでしょう。
その人を思い浮かべて、イラッとしたことや腹が立ったことを、五・七や七・五でつぶやいてみるだけ。あなたも何かあるでしょ?」

──うーん、最近ギャラの支払いで揉めまして…。
夏井「ああ! いいじゃないですか!! ギャラで揉めるって! 例えば『ギャラで揉める』って、これで6音ゲットしてるわけですよ」

──ホントだ!
夏井「自分の口から『ギャラで揉める』と出たその瞬間に、悩みが俳句のタネになり始めるわけですよ。
これを伝聞にすれば、他人のふりをすることもできますが、たった12音の悪態なら世に発表したとしても、悪態をつかれている本人でもほぼ気が付かないんですよ。
そして作品として読んでくれる。『いま俺はギャラで揉めてて』に季語をつけるだけなんです。
ちなみに季語は『歳時記』という季語の解説書に載ってますから、全部自分で覚えておく必要はありません。春なら『春の風』、夏なら『夏の風』でOK。
もうちょっと感情を明確にしたければ、軽い感情なら明るい季語、逆に深刻なら暗い季語をつけるんです。
五・七や七・五で悪態ついて五音の季語を乗っけるのは、『取り合わせ』というちゃんとした俳句の技法で、これさえ覚えておけば永遠に悪態俳句が作れます。
『いま俺はギャラで揉めてて夏浅し』」