夏井いつき先生『プレバト!!』11年の歴史を回顧「ジュニアさんに『真面目な視点が素晴らしい』と言うとイヤな顔されます(笑)」

「“俳筋力”が付くと俳句が成功する確率が高くなってくる」

夏井いつき (C)週刊実話Web
──夏井先生は全国各地で「句会ライブ」を開催されています。番組に出演以降、参加者は変わりました?
夏井「俳句をうまくなりたい、ヒントが欲しいという経験者が多かったんですが、やったことも習ったこともなく、『プレバト!!』を見てるだけというお客さんが増えましたね。
そういう方でもいい句が出てきたり、素晴らしい感想を述べてくださるんですよ。番組を見ているだけで“俳句の筋肉”が付いているんですね」 

──“俳句の筋肉”って、面白い表現ですね。
夏井「日本語を話せる人なら、誰でも俳句が詠めるようになります。才能じゃなく、俳句は筋トレなんです。
例えば『プレバト!!』を見ているのも筋トレの一つ。助詞を考えたり、作り方のノウハウが入ってきたりしますし、ブランコが春の季語だと知ることもできて、小さな“俳句の筋肉”が育ってくる。
“俳筋力”が付いてくると、俳句が成功する確率がじわじわ高くなってくるし、昨日まで作れなかったタイプの句が作れるようになったりする。決して才能じゃないんですよ」

──生成AIがしゃべり出すような時代、俳句が注目されるのも面白いです。
夏井「AIの言うことを参考にしたり、情報収集のツールとして使う人はいるかもしれないけど、俳句の根本は作るところにありますからね。俳句を作って楽しむことは、AIにできないでしょう」

──AIから言葉を取り戻していっているようにも見えます。
夏井「表現することを楽しむ人が増えるのは、社会に対しても大事なことだと思っています。
言葉をちゃんと自分のものとして使いこなせて、他人とコミュニケーションが正しくできるように。
子供も大人も言葉を正しく使う技術をきちんと手に入れていかないと、これから大変な時代になるという危機感を私は持っています」

──言葉は大切ですよね。コロナ禍でも俳句が注目されたと聞きますが、あの時期も言葉と向き合うきっかけになったのでは。
夏井「俳句は1人でもできるし、仲間内では『俳人が一番強いんじゃない?』って言ってました。
吟行(俳句作りに歩くこと)は大人数も楽しいですが、1人でもできますし、何より俳句の世界には『生憎ということはない』という言葉がありますから」