野村監督に“疫病神”と呼ばれた記者が「サッチー脱税騒動」を振り返る

野村克也 (C)週刊実話Web
【阪神球団創設90周年ベンチ裏事件簿】第九弾
阪神球団創設90周年。プロ野球界で長らく巨人と人気を二分してきた“西の雄”だ。その阪神の番記者として陰に陽に取材してきたのが、元スポーツニッポンの吉見健明氏。トップ屋記者として活躍した同氏が、知られざる阪神ベンチ裏事件簿の“取材メモ”を初公開する。

サッチー「あんた、また野村の足を引っ張りに来たの?」

野村克也は妻であるサッチーこと野村沙知代が原因で事実上、2度、監督を解任されている。

1度目は南海ホークス。そして、2度目が阪神タイガースだ。

2001年3月、東京国税局が阪神球団に、サッチーの脱税に関しての立ち入り調査を行った。

当時のサッチーはテレビの人気者になっており、シーズン中もこの脱税疑惑が大きな注目を集めることになった。

この一件は阪神監督を務めていた野村にも影響することになる。

阪神は2年連続最下位に沈んでいたが、球団首脳陣の野村への信頼は揺るがず、8月の段階で来季の続投を宣言するほどだった。

だが、シーズン終了後の同年12月、サッチーは約5億6800万円の所得隠しの容疑で東京地検特捜部に逮捕される。

筆者は逮捕情報を事前に掴み、秒読みであることを確信して取材に動いていた。

脱税疑惑を取り上げた朝のワイドショーに出演した際には、同じく番組出演していた息子のケニー野村と控室で話す機会があり、サッチーが脱税をしている事実を聞いていた。

サッチーの連れ子でケニーの兄の団野村とは温度差があり、団はサッチーの言いなりだったが、ケニーは脱税の証拠となる物証や証言を捜査当局に提供するなど母親には反抗的だった。

サッチーの脱税事件は身内のゴタゴタから発覚し、捜査、逮捕につながったのだ。

サッチー逮捕の3日前、筆者は彼女を直撃している。

東京・銀座の書店で開かれたサイン会を訪れ、移動中だったサッチーに「またあなたの行動が、野村さんが監督を辞める結果を招いてしまいましたね」と質問を投げかけた。

「あんた、また野村の足を引っ張りに来たの?」

「逮捕は避けられませんよ」

「あたしは何も悪いことしてないわよ!」

サッチーはいつもの調子で睨みつけ、悪びれた様子もなく答えると筆者を追い払った。