すべては映画好きのために――“名画座界のマザーテレサ”のむみちの情念は著名人の魂も叩いた

「なんでこんなに皆さん応援してくれるのか」

名画座手帳 (C)週刊実話Web
「私は1人で気楽にやる方がいいから、あなたたちはあなたたち独自のものを作ってみたら?」

そんなのむみちの言葉を受けて誕生したのが、姉妹紙『ミニシアターかんぺ』(現在154号)である。

「’16年には、有志の人たちの助けもあって『名画座手帳』を創刊しました。その後、瀬戸が往来座内に編集室を作って。

スケジュールに映画人の命日や誕生日、活動年表や、映画館情報、主要名画館の座席表などを詰め込んでありますが、毎年手帳の帯をゲストの人に書いていただいて、小西さん、太田さんから始まり、宝田明さん、若尾文子さん、橋本愛さん、柳家小三治さん。そして今年は映画監督のアキ・カウリスマキさんと岸井ゆきのさんに、直筆のメッセージを頂いています。

カバーには“かんぺ”が入るポケットもついて超機能的です。でもね、私、思うんですよ。なんでこんなに皆さん応援してくれるのかってね。『かんぺ』って儲けはまったくなし。手帳は売り物だけど思想は同じです。

がめついことをやろうとしているわけじゃなくて、あくまでも“映画が好きな人の生活が楽しくなるため”という目的のためにやっている。その思いがダダ漏れしているからなんだろうなって。みんな、本当に映画であり、名画座が好きな人たちです。だから余計に変なものは作れませんよね」

のむみちは“書き手”としても新たな一歩を踏み出す。

’18年には故・宝田明氏の『銀幕に愛をこめてーぼくはゴジラの同期生』(筑摩書房)の構成を担当。

故郷の宮崎日日新聞では月2回の映画コラムの連載が始まり、『アプリ版ぴあ』で水先案内人を務め、映画イベントにも多数参加と、かんぺを切っ掛けに、大きく人生が進んでいった。