掛布雅之と門田博光のトレードは実現していた!? 南海オーナーが囁いた「阪神は掛布を出すのかい?」

阪神甲子園球場(C)週刊実話Web
【阪神球団創設90周年ベンチ裏事件簿】第八弾
阪神球団創設90周年。プロ野球界で長らく巨人と人気を二分してきた“西の雄”だ。その阪神の番記者として陰に陽に取材してきたのが、元スポーツニッポンの吉見健明氏。トップ屋記者として活躍した同氏が、知られざる阪神ベンチ裏事件簿の“取材メモ”を初公開する。

「私の目の黒いうちは絶対、ウチの監督にはしない!」

4代目ミスタータイガースの掛布雅之は、なぜ阪神監督になれなかったのか。

ファンの間では今でもよく話題になる。

定説になっているのは、「私の目の黒いうちは絶対、ウチの監督にはしない!」と関係者に語ったとされる名物オーナー・久万俊二郎の呪いだ。

きっかけは掛布が起こしたある事件だった。

シーズン開幕を目前に控えた1987年3月。掛布は友人の結婚式から帰宅途中、飲酒運転の現行犯で逮捕されてしまう。

掛布逮捕の一報を聞いた久万オーナーが言い放ったのがこの発言だったという。

この時代、飲酒運転に対する認識は低かった。

もちろん、違法であることは同じだが、スター選手や芸能人は仮に飲酒運転中にパトカーに停止させられても、「ああ、〇〇選手でしたか。注意して運転してくださいね」とお目こぼしされることが多かったのだ。

まして熱狂的な猛虎ファンが多い関西でのミスタータイガース人気は凄まじく、掛布もそうした環境に甘えていたのだろう。

逮捕時に警察官に対して「俺は阪神の掛布だぞ!」と凄んだことも報じられ、批判が殺到した。

久万オーナーが激怒したのも当然だが、過激な言葉が事態を混乱させたことも事実だ。

事件後、記者から掛布をトレードする可能性を聞かれ、「掛布は欠陥商品。それをトレードなんて、相手球団に失礼だ」と口にしている。

自分で蒔いた種とはいえ、掛布はプライドをズタズタにされ、その後の球団との関係に大きなしこりを残すことになった。

それにしても、阪神はつくづくけったい(不思議)な球団だ。

どんなにスター選手であっても、少し調子を落としたりケガや不祥事があるとすぐにトレード話が飛び交い始める。

その結果、球団と選手の関係がややこしくなってしまうのだ。

掛布も例外ではない。1980年オフには南海・門田博光とのトレード話が浮上したことがあった。