『名画座かんぺ』を作って14年 名画座界のマザーテレサ・のむみちインタビュー「主役は映画で、自分は発行人」

「お金取ると面倒くさいじゃないですか」

『名画座かんぺ』
そんなことをボヤキつつ、14年以上、月末になると古本屋業の合間に、いや、仕事中にすら、彼女は各館に来月のスケジュールを確認し、それを一枚の紙に手書きし、構成し、印刷し、一枚一枚手折りでポケットサイズに畳み、配布までしてきた。

フリーペーパーだから無料。制作費は約1万円の自腹だ。

100円でも取ればいいのに、無料を貫き、広告も取らない。

ただ道に迷う名画座ファンの苦しみを救わんと無償の愛を実践する名画座界のマザーテレサ、のむみち。

それは労働ではなく、一つの“祈り”のようにすら見えてくる。

「いやいや…お金取ると面倒くさいじゃないですか。集金しなきゃいけないし、広告取ったら、自分の作りたいものが作れなくなるし。いろんなことを考えたら、無料が一番いいんです。

それで、160号。みんなから『それだけ続けられるなんて本当にすごいね』と言ってもらえるんですけど、これもやめるのが面倒なだけ(笑)。

私の人生、基本、“面倒くさい”なんですよ。これが面倒くさがらない人だったら、私めちゃめちゃ成功しているはずですよね」

自分の性格を“前向きに後ろ向き”と分析するのもなんとなく理解できる彼女は、それでも何故、この世界屈指の面倒くささである、この細かすぎる『名画座かんぺ』を作り続けられるのか。

それは、この『かんぺ』を待っている多くの人たちがいるからに他ならない。

「噂を聞いて『うちにも置かせてください』と言ってくださる方が増えて、今では20カ所ぐらいに配布しています。費用も掛かるし、積極的に増やしたいわけでもないです。でも誰かの役に立てているなら、しょうがないじゃないですか(笑)」

(中編に続く)

取材・文/村瀬秀信

「週刊実話」5月29日号より

死ぬ前までにやっておくべきこと】アーカイブ