『名画座かんぺ』を作って14年 名画座界のマザーテレサ・のむみちインタビュー「主役は映画で、自分は発行人」

のむみち (C)週刊実話Web
村瀬秀信氏による人気連載「死ぬ前までにやっておくべきこと」。今回は、都内にある名画座の上映スケジュールをまとめた『名画座かんぺ』を作っている、のむみち氏のインタビュー(上)をお届けする。

「あはは。どうかしてますよね」

人はなぜ映画を愛し、古い映画に惹かれるのか。それは映画が時代の記憶を宿す容れ物だからだ。

そこには物語だけでなく、当時の人や空気、街の音らが映り込み、過去を追体験できる装置としての映画――そんな作品と観客をつなぐ場が名画座であり、そこに静かに寄り添う地図のような存在が『名画座かんぺ』だ。

創刊2012年1月。以来、月刊で通算160号。東京を中心とした名画座や書店、喫茶店などで配布されており、B4の紙を八つ折りにした見開き1枚には名画座主要5館+1の上映スケジュールが米粒に写経をしたように手書きでびっしりと、しかし欄外に至るまで機能的に美しくレイアウトされている。

裏面にはこれまたゴマ粒大の文字で劇場インフォメーション、イベント情報、映画関連本などの情報が。

罫線、余白、書体、情報の密度――そのすべてに、作り手の映画への狂気、いや、敬意が宿っている。

この『名画座かんぺ』を、なんの見返りもなく一人で作り続けてきたのが、南池袋にある『古書 往来座』の店員、のむみちさんだ。

「あはは。どうかしてますよね。今年で創刊から14年、月に1回、月末の発行を目指してやってきていますけど、一応一度も休んだことはないんですよ。盆も正月も映画はありますからね。

月末になると締め切りに追われてめちゃくちゃ忙しいですけど、でもまぁ、これは『かんぺ』なんで。主役は映画で、自分はただの発行人。クリエイティビティを必要とする“作品”ではないので気は楽ですよ。

だから、みんなフラットに使えるんでしょう。どんなときに役に立つかって、例えば『この映画見たい!』と思って映画館に行っても満席で入れないときがあるじゃないですか。そんなときにパッと見れば、今どこで何がやっているか一目瞭然。『あ、ここなら間に合う』って行けるんですよ。

すごいでしょ。いい発明したと思うんですけどね」