『名画座かんぺ』を作って14年 名画座界のマザーテレサ・のむみちインタビュー「主役は映画で、自分は発行人」

「我ながらいいアイデアだし、作ってみると楽しいんです」

『名画座かんぺ』
のむみちさんが『かんぺ』を思いついたきっかけも、自身が年間300作品を見ていた名画座に通う日々のなかで芽生えたものである。

『かんぺ』以前の名画座事情は、各館で配布される莫大な数の上映予定のちらしを見比べて鑑賞のローテーションを組み立てなければならなかった。

あるとき、文房具店で「ファミリーカレンダー」という家族の予定を記入するカレンダーを発見し、これに父の欄は新文芸坐、母は神保町シアター、子どもに阿佐ヶ谷、渋谷と、自分の行きたい映画の上映日にタイトルと時間を書き込んでみると、その便利さに感動し、勢い余って思わずひらめいてしまった。

「あ、これを“全部”書き込めば、誰かの役に立つかもしれないなって。ガチな名画座好きの人たちは、必ず映画館をはしごしますからね。

一枚の紙に書き込めば、ひと目で今やっている作品が分かりますし、いろんなページに飛ばなきゃならないデジタルよりも便利。それを思いついてしまったのが2011年の秋。創刊は翌年の1月でした。

それもね、流行り病に侵されたような熱があったタイミングだからできたことなんでしょうね。私、名画座にのめり込むようになったのが遅くて、30歳を過ぎてからなんですよ。こういうのって同世代だと、大学のときにミニシアターブームとかあって通過するようなもの。

でも、私は大人になってから。ホラ、おたふく風邪も遅くに掛かると一番厄介と言うじゃないですか(笑)。

行き場のない熱量が溢れていたタイミングで、ヘンなスイッチが入っちゃった。そのおかげで『名画座かんぺ』ができた。我ながらいいアイデアだし、作ってみると楽しいんです。

でも作業は思った以上に大変で、2号目から『もうやめたい』と思っているんですけど、やめられないまま、ずっと続けてしまっています」