戦後3番目、69日の超短命内閣だった宇野宗佑の“器用貧乏”な素顔

多芸多才も“逢瀬”は不器用!?

この件については筆者の事務所が神楽坂にあったことで、地元の“事情通”からだいぶ取材した思い出がある。

そのなかの一人で宇野とAさんとの関係をよく知る料亭関係者は、こう言って苦笑していたものだった。

「総理はAさんに相当惚れておったようです。Aさんが他の座敷に出ていると、仲居ともろくに口を利かず、ふてくされたように畳に横になって、Aさんが来るのをひたすら待っていたといいますナ」

「文人政治家」宇野の俳号は「犂子」で、その句集である『宇野犂子集』には、次のような粋な“名句”が散見できる。

いかにも、神楽坂芸者との“逢瀬”を彷彿とさせるものであった。

縁切りの 灰文字かきて 日の永き
白上布 つつころばしに 痴話多し
逃げ水に 女騙せし 彼奴憎し

惜しむらくは宇野は、トップリーダーたるにはいささか“器用貧乏”で、わずか69日間の政権の成果は、もとよりゼロであった。

(本文中敬称略/完=次回は海部俊樹)

「週刊実話」5月22日号より

小林吉弥(こばやし・きちや)

政治評論家。早稲田大学卒。半世紀を超える永田町取材歴を通じて、抜群の確度を誇る政局・選挙分析に定評がある。最近刊に『田中角栄名言集』(幻冬舎)、『戦後総理36人の採点表』(ビジネス社)などがある。