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『がんばってるのになぜ僕らは豊かになれないのか』著者:井上純一~話題の1冊☆著者インタビュー

『がんばってるのになぜ僕らは豊かになれないのか』著者:井上純一~話題の1冊☆著者インタビュー
Ⓒ井上純一

『がんばってるのになぜ僕らは豊かになれないのか』KADOKAWA/1210円

井上純一(いのうえ・じゅんいち)
TRPGデザイナー。漫画家。玩具会社「銀十字社」代表取締役。代表作にスタンダードTRPGシリーズ(SRS)『アルシャードセイヴァー』『エンゼルギア』『天羅万象』他。著作に『中国嫁日記』『中国工場の琴音ちゃん』などがある。

――日本の経済が分かりやすく説明されていると評判です。経済に興味を持ったきっかけは?

井上 経済って難しそうで、しかもうさんくさいですよね。短期経済見通しとか「緩やかに回復」の一辺倒で、しかも外れてばかり。しかし、私の友人の一人が経済に詳しくて、リーマンショック以降、彼の言う通りになったんです。経済を学んだ今では当たり前と分かることしか言ってなかったんですが、その頃は魔法のように思えましたね。その彼が本書に協力してくれたアル・シャードさんです。

――本書では「月サン」の素朴な疑問に答える形で、経済の仕組みを紐解きます。そもそも月サンとは?

井上 経済は確実に面白い。だからマンガにしようと思ったんですが、これがどうひねっても面白いマンガにならない。結局、解説マンガになってしまうんですね。そもそもマンガって、キャラを読むものです。だから経済をキャラ付けしないとならない。

そう悩んでいたときに、妻の月サンの「円安になると私たちのお金が減る。減ったお金は誰が盗ったのか?」の一言に雷に打たれました。「妻の質問に答える形なら経済をマンガにできる! なんで思いつかなかったんだろう!」と。

日本は決して終わったわけではない

――コロナの影響で景気悪化が懸念されています。今後、日本はどうしたらいいのでしょうか?

井上 「日本は膨大な借金があり、これ以上赤字国債を増やすと国債の利率は暴騰、円は暴落し、超インフレが起こる」と財務省や経済学者は主張していました。そしてコロナ禍で赤字国債が膨大な額になりました。

でも、何も起こっていません。国債の金利は低いまま、インフレどころかデフレです。理由は簡単です。政府のお金を使う量(財政支出)がまだまだ少ないのです。この苦境を乗り切るには、支出を増やすか、減税するかにかかっています。日本は財政破綻しないのですから。

――平均賃金が韓国以下になったという報道が話題になりました。本当に日本は貧しい国になったのでしょうか?

井上 我々はバブルの頃の日本人より働いていないと思いますか? みんな死ぬ気で働いていますよね? でもなぜか年間所得は100万円近く落ち、韓国に抜かれ、いずれ中国にも抜かれるかもしれない。

でも、それは我々のせいではありません。何が悪いのか学んで、これからの日本を変えていきましょう。まだ変えられます。日本は決して終わったわけではないのですから。

(聞き手/程原ケン)