「痛みによく耐えて頑張った。感動した!」貴乃花を力士生命の危機に追い込んだ“永遠のライバル”曙、武蔵丸との大一番【平成大相撲伝説の名勝負5】

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3月9日から「大相撲春場所」(大阪市・エディオンアリーナ大阪)が始まるが、初土俵から最速で大関昇進を遂げた大の里、元横綱の祖父を持ち昨年の九州場所を優勝で飾った大関琴桜、今年初場所の優勝決定巴戦を制し、横綱に上り詰めた豊昇龍など、新たなスターが登場したことで空前の「令和大相撲ブーム」が起きている。

そこで今回は、平成大相撲の中からファンの度肝を抜いた伝説の取組をプレイバック! 土俵上で繰り広げられた熱い力と技のぶつかり合いをご堪能あれ。

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相撲報道でまれに登場するのが、“鬼の形相”というフレーズ。言葉通り、力士が負けられない一戦で「鬼のように恐ろしい顔付き」を見せたことを伝えたものだが、平成の相撲史においてこのフレーズが最もふさわしいのは、やはり2001年(平成13年)夏場所で行われた貴乃花VS武蔵丸の伝説の一戦だろう。

千秋楽の本割で東横綱貴乃花は西横綱の武蔵丸に土俵下に突き落とされ、13勝2敗と並び優勝決定戦に突入。だが、このとき貴乃花は力士生命の危機に瀕していたという。

「貴乃花は全勝で迎えた14日目の武双山戦で黒星を喫したが、この取組で土俵際に巻き落とされ右ひざを強くひねって亜脱臼、半月板を損傷する重傷を負った。付き人たちの肩を借りて足を引きずりながら支度部屋に引き上げる姿を中継のカメラが捉えていたことから、実は千秋楽の出場も絶望視されていたのです」(相撲担当記者)

事実、この負傷は一夜明けても回復にすることはなかった。父親でもある二子山親方は休場を勧めたが、貴乃花は「ファンのために出たい」と不屈の精神で出場を決意。

右ひざを痛々しいほどテーピングした姿で臨んだ本割で武蔵丸に敗れると、支度部屋に戻って精神集中し、ついに相撲ファンが固唾をのんで見守る優勝決定戦の土俵に上がったのである。

「この際、貴乃花は外れたひざが奇跡的にハマったらしく、立ち合いから突っ張りを食らわし右四つに組んで左上手を取ると、渾身の力で武蔵丸を上手投げで投げ飛ばした。武蔵丸が土俵に横倒しに転がった瞬間、会場からは割れんばかりの拍手と声援が響いたが、次の瞬間貴乃花は目をむき、歯を食いしばる“鬼の形相”で勝利を鼓舞してみせたのです」(同)