虐待、言葉の暴力、水増し不正請求が蔓延る障害者施設の闇…営利法人多数参入で不正・囲い込みが増殖か

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「私たち抜きに私たちのことを決めないで」

このフレーズを一貫して掲げる国連の「障害者権利条約」に日本が批准したのは、2014年1月のことである。

だが、「障害者主権」を謳うこの画期的な条約が、日本の障害者に恩恵をもたらしたという形跡は、ほとんど見当たらない。

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殺人事件として戦後最悪の犠牲者を出した知的障害者福祉施設『津久井やまゆり園事件』(神奈川県相模原市)が起きたのは、よりによって同条約批准から2年半後の2016年7月のこと。それから7年後の2023年5月には、神奈川県直営の『中井やまゆり園』で複数の入所者に対する25件もの虐待が発覚した。

それ以外にも障害者施設をめぐる虐待事件は連日のように報道されているが、こうした虐待はそのほとんどが密室で行われるため、多くの人はその内実の一瞥さえも叶わない。

その内実を赤裸々にルポルタージュしたのが、先月出版された『知的障害者施設 潜入記』(光文社新書)である。

著者の織田淳太郎氏が「乞われるまま、あまり気乗りもせず」ある障害者施設にパート入職したところ、「ひどい内実を知ってしまった」というのが執筆のきっかけになっている。

「そこは複数のグループホームを持つ営利型の生活介護事業所で、利用者の多くが知的障害者でした。私がまず驚いたのは、一部職員のあからさまな差別意識です。『ここで働いたらこっちまで頭がおかしくなる』と平気で口にする職員もいれば、年齢が自分の倍以上の利用者を“お前”呼ばわりする若い職員もいた。言うことを聞かない女性利用者に『おれは、障害者が嫌いなんだよ!』と露骨に吐き捨てた職員もいました。その利用者は『障害者になりたくてなったんじゃない!』と泣きわめいていました」(織田氏)