虐待、言葉の暴力、水増し不正請求が蔓延る障害者施設の闇…営利法人多数参入で不正・囲い込みが増殖か



放棄や放置、肉体的な虐待も目撃

施設内で行われていたのは、こうした言葉の暴力だけではない。

織田氏によると、利用者の多くが「本人のため」と称する懲罰やネグレクト(放棄・放置)、時に肉体的な虐待に晒されていたという。

「会社のルールに従わない利用者は、個人の買い物や行事参加、福祉サービスの利用などを禁止されました。4カ月も買い物に行けなかった利用者もいたほどです。グループホームからの外出も、たとえ単独行動可能な利用者であっても御法度。ほとんどの利用者が小遣いを会社に管理されていて、外部に窮状を訴えようにも切手一枚買うこともできない。あるとき空腹に耐えかねた男性利用者が、他の利用者のお菓子や現金を盗んでしまったことがありました。そのことで彼は複数の社員に密室に連れ込まれ、全身がアザだらけになるまで集団暴行を受けた。別の男性利用者はルールを破ったからとバリカンまで差し出されました。頭を丸めて反省しろというわけです」

隔離収容主義を敷いてきた日本の障害福祉施策が一転、地域移行へと舵を切ったのは、障害者の「完全参加と平等」を掲げた1981年の国際障害者年によって、ノーマライゼーションの理念が国際的に浸透したことに端を発している。

これによって入所施設は否定され、2012年時点で、グループホームなどへの累計の地域移行者数は政府の見込みを上回る約2万5000人。2019年にはグループホーム入居者数が入所施設のそれを12万人後半で凌駕し、いまは17万人を超えたといわれている。

にもかかわらず、依然として後を絶たない障害者虐待や「水増し請求」などの不正…。

長野県精神医療人権センターの東谷幸政代表が言う。

「大きな問題の一つは、障害者自立支援法の施行(2006年)で、障害福祉の分野に株式会社などの営利法人の参入が認められたことでしょう。これに対しては、私たちも『障害者が食い物にされる』と猛反対しましたが、そういう福祉への理念も志もない営利法人がどんどん参入してきたことで、虐待や水増し請求などの不正が目立つようになりました。しかも、精神科病院と同じように、経営維持のための利用者の抱え込みも見られるようにもなった。一般就労が可能な利用者さえ、施設を出そうとしないわけです」