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蝶野正洋『黒の履歴書』~政治家と緊急事態宣言の大罪

蝶野正洋『黒の履歴書』~政治家と緊急事態宣言の大罪
蝶野正洋『黒の履歴書』 (C)週刊実話Web 

新型コロナウイルスが収束せず、東京や大阪などでは緊急事態宣言が延長となるなど、先が見えない状況になってしまった。

休業要請も、演劇やライブはよくて映画館はダメ、飲食店は20時までだけどイベントは21時までOKだったりと対応がバラバラで、しかも、なぜそうなったのかという根拠や効果が説明されないから、みんな困惑もしている。それでも会社と学校は止まらないから、通勤通学はしなきゃいけないし、みんなストレスがたまる一方なんじゃないか。

政府や自治体からしてみれば、陽性者が減らないから延長せざるを得ないのかもしれないが、規制される企業にとっては死活問題だ。緊急事態宣言を繰り返すごとに経済的なダメージは大きくなっているし、自粛期間が1日でも延びれば、それだけ回復するのも大変になる。

多くの企業はこの春からなんとか景気を回復させようと先行投資をしていたはず。だけど、それが裏目に出てしまった。今回のダメージは、これからジワジワと表面化していくと思うよ。

コロナは予測がつかないけど、それでも企業側は必死に考えて計画的に動いていた。それに比べて、政府は陽性者が増えたから緊急事態宣言を発令し、収束しないから延長と場当たり的に決めているように見える。

俺が経営している「アリストトリスト」では、ゴールデンウイーク期間中に百貨店でアパレル商品をイベント販売する予定だったが、緊急事態宣言ですべて中止になってしまった。

アパレル商品というのは、春・夏の新商品を売りだそうと思ったら、前年の冬までにデザインを決めて、売り出す3カ月前には発注しておかないといけない。季節商品でもあるから、売り時を逃したら大量の在庫を抱えることにもなってしまうんだよ。

行き当たりばったりで決断が遅いのが最悪だ

これはアパレルだけの問題じゃない。どんな企業も先々の予定を決めて動くし、イベントやプロレスだって何カ月も前から準備や宣伝をしている。急に中止になったら、その損失はとてつもなく大きい。ダメならダメで先回りして決めてくれれば発注量を減らすこともできるし、こっちも対処方法がある。とにかく、行き当たりばったりで決断が遅いのが最悪だよ。

東京オリンピックも同じだ。ほとんどの国民は、もう開催でも中止でもいいから、とにかく早く決めてくれと思っているんじゃないかな。やるのかやらないのかをダラダラと引っ張って、ギリギリになるまで決めないというのはマイナスしかない。こういうことが繰り返されると、コロナだけど頑張って巻き返そうとか、なんとか売り上げを取り戻そうという企業の「やる気」が削がれてくる。

こういう緊急事態に、リスクもあるけどとにかく決断して物事を前に進めていくのが、政治家の本来の役目なんじゃないか。今の政治家、官僚はどちらも問題を先送りにして、自分の利益のために立ち回っているだけにしか思えない。リスクを取ってでも、この状況を本気でなんとかしようって思っている政治家なんて、日本には一人もいないんじゃないか。

新型コロナは怖いが、このコロナを取り巻く状況で何もできない日本の政治やシステムのほうが恐ろしく感じるよ。

蝶野正洋
1963年シアトル生まれ。1984年に新日本プロレスに入団。トップレスラーとして活躍し、2010年に退団。現在はリング以外にもテレビ、イベントなど、多方面で活躍。『ガキの使い大晦日スペシャル』では欠かせない存在。

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