「シャッターチャンスは1試合500回!」審判写真家・林直樹が野球判定の奥深さと魅力を丸ごと解説

審判写真家・林直樹氏(右)と山﨑夏生さん(左)
男たちの魂の叫びを届ける、「死ぬ前までにやっておくべきこと」。今回も野球の審判の雄姿を撮り続ける、審判写真家・林直樹氏のインタビューをお届けする。

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「誤審というのは公認野球規則上あり得ないんですよ。なぜって、ルールブックには『審判の判定が最終判断』ということが書いてありますから。つまり、審判が下した判定が覆ること自体がおかしい。最近ではリクエスト制度もできて、判定が覆ることも珍しくなくなりましたが、その前提は崩れつつあります。僕は会社で経理の仕事をやっていますけど、やっぱり、1の位までちゃんと正確に求める性分なんでしょうか。絶対不変の答えがあるならば、きっちりとルールに則って、正しい答えを出したい。審判が好きなのも、そういう性質からなのかもしれません」

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経理課長・林直樹は世にも珍しい「審判写真家」である。

専門的に写真を勉強したことはない。ボランティアで社内イベントなどを撮影する社内カメラ班の立ち上げに参加したことをきっかけに撮り始めると、これが予想外に好評となり、各部署から引っぱりだこに。

さらには趣味だったプロ野球観戦で審判を撮ってみると、これが実に奥の深い世界であることに気が付き、以来、審判写真の世界にどっぷりと浸かってしまった。

「写真の世界ではグラビアやスポーツ写真、あらゆるジャンルにそれを専門とする巨匠と呼ばれる存在がいるんです。でも審判は誰もいない。こんなに面白い世界なのに、完全なるブルーオーシャン。人生を懸ける価値はありますよ。特に野球の審判は、あらゆるスポーツの中でも判定の数が最も多い競技といわれていて、1試合のうちに300~500回のジャッジがされるといわれています。シャッターチャンスはそれだけ多いですし、細かい動きを見ているだけでも本当に面白い。見ている人が誰も知らなくてもまったく支障はない。そんなところに宿る職人性というんですかね。例えば、1試合のうちにキャッチャーがマウンドに行けるのは3回なんですけど、行く度に球審は1回、2回とジェスチャーして最後は『×』を出す。こういうときもシャッターチャンスですね。『おお、今×が出た』って誰も注目していないからこそ、興奮するんです」