「シャッターチャンスは1試合500回!」審判写真家・林直樹が野球判定の奥深さと魅力を丸ごと解説



審判には味方なんて誰もいない

イベント風景
これまで撮影した30万枚以上の審判写真の中でも、特にいい場面を撮れた写真を被写体となった審判にプレゼントすることもある。

そんなことがきっかけで審判員の知り合いも増え、球場へ行けば雑談をしたり、オフにトークイベントを行うなどで、審判の生態により詳しくなっていった。

「知れば知るほど、彼らこそが本当のプロフェッショナルだということを思い知らされますね。味方なんて誰もいないですよ。両チームの監督や選手、さらに何万人っていう球場のファンから文句を浴び、果ては何百万人っていうテレビの向こう側にいる視聴者から悪者扱いされることもある。一昨年に佐々木朗希の態度に詰め寄った白井一行さん(袖番号20)なんか、世間から一斉に叩かれましたよね。ボークのジャッジだって、ものすごく勇気のいる行動ですよ。あんなことすれば叩かれるし、嫌われたくなければ何もしないのが絶対にいいんです。ただね、審判が一番近くでプレーを見ているのは、それだけの資格と覚悟を備えているからなんですよ。5万人の観衆がおかしいと言っても、ルールという絶対的な法に則り、正しいと信じた判定を下す。よくファンの人が『審判が贔屓した』とか、『あいつは回し者だ』なんて言われますけど、ある審判の方は『子供の頃から大ファンのチームがあったとしても、1試合ジャッジすれば冷める』と言っていました(笑)」

審判という孤独な職業に光を当てたいと林はファインダー越しから彼らを覗く。

プロ野球選手と同じ、いやそれ以上にシビアに審判というプロフェッショナルは一つのジャッジでクビにもなれば、その年の優秀な審判として日本シリーズに出場するベスト7にも選ばれる。

ただ、どんな優秀な審判でも100%間違いがないかといえば、そうではない。

審判の写真を撮るということは、決定的な誤審の瞬間を捉えてしまうことも珍しくないのだとか。