毒家族が怒鳴り込み結婚披露宴で泣き叫ぶ花嫁…「家族レンタル」業者が見た“毒親育ち”の苦悩



『こんな親がいるなんて詐欺だ』と破談に

いったい何があったのか。

なんと、新婦の本当の両親が、どこからか娘の結婚を聞きつけて怒鳴り込んできたというのだ。

「新婦の両親の席に座った私と母親役をしていたうちの会社の同僚を見て、実親たちが『誰なんだ貴様らは!』と怒鳴り散らしてきたんですよ。暴力を振るわれそうになったところを、慌てて会場のスタッフが止めに入ったのですが、新婦は高砂で『なんでここまで来るの!?』と泣き叫んでいました」

新郎自身は彼女の事情を知っていたそうだが、その両親には伝えていなかったため、新郎の親類側が激怒。結果的にその場で破談となったという。

「あれは縁を切りたくもなるよな、と納得するほどの暴れっぷりでしたね。新郎側が『こんな親がいるなんて詐欺だ!』なんて言ってましたけど、あの親を新しい家族に見せたくないと思って私たちに依頼した気持ちは、第三者視点からはすごく理解できました。それ以降、私は本当に心から、クライアントの切迫した状況にしっかり寄り添うと決めたんです」

実親では叶えられない願いを、自分が叶えてあげたい。

偽物であろうと幻想であろうと、その一瞬だけは「本物の家族」がいるのだと錯覚させてあげたい。

そう松井さんは語る。

「孤独に生きている分、金銭を得るための仕事と割り切ってしまうより、ある程度の思い入れを持って代行したいと思ってしまうんですよね」

「毒親」が存在する限り、家族をレンタルする人が絶えることはなさそうだ。