毒家族が怒鳴り込み結婚披露宴で泣き叫ぶ花嫁…「家族レンタル」業者が見た“毒親育ち”の苦悩



家族を“レンタル”したがる理由は…

さまざまなジャンルの代行業がある中で、松井さんは敢えて「家族」をメインとして選んだ。

その理由の一つには、彼の境遇が大きく関わっている。

「私はこの年まで独身を貫いてしまったので、仕事を辞めてからはかなり孤独な生活をしているんですよ。だから仮初でもいいので、少しでも家族の温もりに触れられるとすごく嬉しいんですよね」

だが、仕事を続けていく中で、松井さんは気付いたことがあるという。

なぜ、周囲を欺いてまで家族をレンタルしたがる人間が多いのか?

そこには「毒親」というものの存在が大きく絡んでいた。

「私は年齢的に、結婚を控えたクライアントの『父親』という立場でのレンタルが特に多いですね。年齢層は20代後半から30代後半くらいが主ですね。もちろん親が早く逝去している人も中にはいますが、実際のところは『親は生存しているが、会いたくない』という関係性の方が増えているんですよ」

精神的または肉体的な虐待、経済的な寄りかかりなど、背景事情はクライアントによってさまざまだ。

しかし結婚するにあたり、相手の家族から顔合わせを求められた時に、断るわけにもいかないというクライアントは後を絶たない。

そして一様に「本当のことを話すと破談になるかもしれない」という不安を漏らすのだという。

「私自身は実の親にそんな感情を抱いたことはありませんし、仕事を始めたばかりの頃はあまりその気持ちを理解してあげられていなかったように思います。しかし、新婦の父親代行として列席した結婚披露宴でちょっとした事件があったんです」