北朝鮮の狙いは米国への陽動作戦か 「ICBM発射」「特殊部隊ロシア派兵」を断行する金正恩の“あさましき思惑”

クルスク奪還が軍務か

ロシアと北朝鮮は、今年6月に包括的戦略パートナーシップ条約を締結した。その中の第4条には、「露朝いずれかが武力侵攻を受け、戦争状態に陥った場合、遅滞なく、保有するあらゆる手段で軍事的、その他の援助を提供する」と明記されている。

今回の派兵はこれに則った行動だが、ロシアはウクライナを侵略したのであり、攻撃を受けたわけではないから、厳密には北朝鮮側の兵士派遣は軍事協定外の行動と言っていい。

「韓国国家情報院によれば、ロシアに派遣されている部隊は、第11軍団(通称・暴風軍団)と呼ばれる特殊作戦部隊。この部隊は、日米の情報機関では教育訓練指導局(TUGB)と呼称されています。北朝鮮軍の中では最も精鋭とされる集団です」(軍事ライター)

暴風軍団は、3個の軽歩兵旅団、狙撃旅団、4個の空挺旅団から構成されている。軽歩兵旅団と狙撃旅団は歩兵として、空挺旅団は落下傘降下による空挺作戦やヘリボーン作戦を実施する特殊作戦部隊で、米軍のグリーンベレーやロシア軍のスペツナズと呼ばれる部隊と比較的、似た運用をされる集団だ。

「10月15日のキエフ・インディペンデント紙は、ウクライナ軍事情報局(HUR)が北朝鮮の派遣する兵士の数について、将軍3人と将校500人を含む約1万2000人と述べたと報じています。1万2000人という数字は、4000人規模の旅団が3つ。将軍3人とは3個の旅団長で、将校500人とは30人を束ねる小隊長と中隊・大隊の指揮官です」(同)

また、その任務はロシア西部の奪還だとみられている。

「暴風軍団はクルスク奪還が軍務でしょう。現在、ロシアはクルスク正面で、2個の空挺旅団と海兵旅団の合計4個旅団が攻撃している。これに北朝鮮の3個旅団が加われば、クルスク奪還の戦力となるかもしれない。ただし、北朝鮮軍はこれまで見せかけの訓練をやっている場合が多く、今回、精密誘導兵器が飛び交う戦場に投入されれば、対応できず砲弾の餌食になってしまう可能性が高い」(同)