「旧1万円札が新千円札を救ったのってご存じ!?」人気講談師・神田あおいが偉人の秘話と“新札講談”を大放言



新千円札の北里柴三郎には政府や医学会もソッポ

神田あおい(C)週刊実話Web
――仰るように、渋沢に関しては大河ドラマで人物像が知れ渡りました。津田は津田塾大学の創設者として何となく知っている。でも、北里はあまり馴染みがないですよね。興味を抱いたのはどの辺なのでしょう?

あおい「破傷風の研究などで知られる微生物学者であり、北里大学の初代総長です。このあたりはご存知かと思いますが、私は彼の伝記を小学3年で読んで以来の大ファンなんです。理由は、裕福でない家の出身でありながら医学を目指し、東大を出たにもかかわらず金儲けや出世よりも研究に没頭したストイックなところでしょうか。そのせいか、時の政府には快く思われず、医学会からも疎まれてしまうんです。彼を雇おうとする研究所がどこもないときに、救いの手を差し伸べたのが福沢諭吉でした。伝染病研究所(現・東京大学医科学研究所)を設立し、援助したんです。言ってみれば、『旧1万円札が新千円札を救った』ということなんですよね。そういうところがちょっと面白いなぁと思います」

――新札講談は今も続けてるわけですね?

あおい「はい。子供から大人まで興味を持っていただけるので、学校や企業、地域のイベントにも行かせてもらってます。講談師1人から2人、3人の場合とご予算に応じて語らせていただきます」

――新作ネタを作るにはどれくらいの時間がかかるのでしょう?

あおい「ひと口に新作と言っても2種類ありまして、自分が演りたいと思って取り掛かるケースと、地方の著名人や名士を題材に作ってくれと依頼される場合があるんです。制作を依頼されて公演日が決まっていたら、その2〜3カ月前から調べ始め、ときにはギリギリ前日になってしまうこともあります。偉そうな言い方になりますが、苦労してできなかった部分が突然『降りてくる』瞬間があるんですね」

――最近では、どんなものを作りました?

あおい「12月10日に予定されている『アルフレッド・ノーベル命日の会』(東京新宿・毘沙門天書院にて)で新作を下ろす予定です。ノーベル財団が題材で、それを作った人物が主人公。当時20代のスウェーデン人の若者(ラグナル・ソールマン)が、ある日知人のノーベルから財団を作ってほしいという遺言を受け取るんです。いきなりそんなことを言われても…という話なのですが、彼がいかにしてノーベルの財産を集めて管理したのか、その苦労談になります」