「少年隊の『仮面ライダー』です!」『NHK紅白歌合戦』伝説の言い間違いで猛批判を浴びた加山雄三の波乱すぎる人生譚



進取の気性と前向きな性格

18年には静岡県の港で、実質的なオーナーとして所有していたプレジャーボート『光進丸』が炎上して水没。火災発生直後の会見では「相棒が消えていくのは本当につらい」と、沈痛な面持ちを見せた加山だったが、後年には「つらい境遇でも頑張って生きている人はたくさんいらっしゃる。皆さんを励ますために歌うのが、残された僕の役割だと思うようになりました」と話している。

莫大な借金や国民的番組での失態、愛船の火災事故など、普通の人間ならどれか一つだけでも心が折れてしまいそうなものだが、そこで気持ちを切り替えられるのが加山の長所だろう。

若者向けの音楽やビデオゲームなど、常に新たなカルチャーに興味を示すあたりも、前向きな気持ちでいられる秘訣なのかもしれない。

19年に軽い脳梗塞、20年には小脳出血を起こしたことから、「歌えるうちにやめる」とコンサート活動からの引退を決意。それでも最後のステージのために懸命なリハビリを続け、22年8月には日本テレビ系『24時間テレビ 愛は地球を救う』でテーマソングの『サライ』を歌唱。同年大みそかの『紅白歌合戦』で歌手活動の幕を下ろした。

加山は今年4月、米寿目前の87歳にして100歳まで生きると宣言。そのためには「守りに入らずに攻めなくてはいけない」と思い立ち、トレーニングを強化しているという。

文/脇本深八

「週刊実話」11月7・14日号より

加山雄三(かやま・ゆうぞう)

1937(昭和12)年4月11日生まれ。神奈川県出身。慶應義塾大学卒業後、’60年に東宝と専属契約を結び芸能界入り。翌年に映画『若大将』シリーズがスタートし、約20年で17作に主演。歌手デビューも果たし、『君といつまでも』『お嫁においで』『海 その愛』などヒット曲多数。自ら作曲(弾厚作名義)も手がける。