森永卓郎が指摘!“令和の米騒動”で暴かれた「食料自給率」の脆弱さを自民党総裁候補が誰も唱えぬ恐ろしさ

森永卓郎(C)週刊実話Web
自民党総裁選挙が、政策論争に突入した。税制や政治資金改革に関しては、意見が分かれているが、岸田政権が打ち出した防衛力の抜本強化に関しては、候補者間にほとんど差異がない。

政党内の戦いなので、安全保障政策に差がないのは当然なのだが、私が一番気になっているのは、候補者が掲げる防衛力抜本強化対策に中身がないことだ。特に、食料安全保障をどうするのかについて、誰も具体策を述べていないのだ。有事の際に、最も大切なことは食料の確保だ。「腹が減っては、戦はできぬ」だ。

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ところが、日本の食料安全保障は、とてつもなくぜい弱だ。何しろ食料自給率は主要国中最低の38%、しかも肥料や飼料などを海外に頼っているので、実質的な自給率は10%程度といわれている。そうしたなかで有事になれば、まず大都市の住民が飢えてしまうだろうと私は一貫して訴えてきた。

その見立ては、「令和の米騒動」で図らずも実証された。大都市のスーパーやホームセンターの店頭からコメが消えたのだ。大災害が起きたわけではない。戦争が起きたわけでもない。昨年の気温が高温だった影響でコメが少し不作になっただけで、これまでコメを安く買いたたいて調達してきた業態からコメが消えたのだ。

その一方で、農家と長期契約をしていた中食や外食の事業者は、ほとんど影響を受けなかった。そして、農家との距離が近い地方のスーパーも、大きな影響がなかった。要は、「市場原理は有事に弱い」ことが、今回分かったことなのだ。