森永卓郎が指摘!“令和の米騒動”で暴かれた「食料自給率」の脆弱さを自民党総裁候補が誰も唱えぬ恐ろしさ

農業就業人口は1960年の10分の1以下

もう一つ明らかになったことがある。それは地方出身者で、実家でコメを作っている大都市住民も、コメ不足の影響を受けなかったことだ。

ただし、実家からコメを送ってもらうという技は、使いにくくなっている。農業就業人口は1960年の1454万人から2020年には136万人と、10分の1以下になっている。

一方、同じ期間の東京都の人口は、968万人から1405万人へと45%も増えている。つまり、農家と無縁で孤立する大都市住民が爆発的に増えているということなのだ。

そうした状況下で、食料がなく、敵からの攻撃の対象となる大都市住民の子供たちの命をどう守ればよいのか。太平洋戦争のときには、多くの子供たちが、安全と食料の確保のために地方へと疎開した。集団疎開もあったが、多くは個人間のつながりのなかで実現したものだった。

人間関係がほとんど失われた現代で、こうした問題にどう対処すればよいのかを明示する政治家がいない。おそらく彼ら自身が「東京の人」で、大都市での生活しか経験がないから、アイデアが出てこないのだろう。

私自身は、3大都市圏を含む太平洋ベルト地帯に人口の6割、付加価値の8割を集中させてしまった国土政策が間違いで、真剣に地方分散を図るべきだと考えている。もちろんそれは処方箋の一つに過ぎない。

自民党総裁選の候補者には、子供たちの命を守るための食料安全保障について、具体的かつリアリティーのある対策を示し、論争をしてほしい。