「本格的な株価下落は来年から」森永卓郎が警告するエヌビディア株乱高下に見る“経済大地震”の前兆

森永卓郎 (C)週刊実話Web
8月29日、半導体株高騰の牽引車となっている米国大手半導体メーカーのエヌビディアが、5~7月期の四半期決算を発表した。売上高は前年同期比2.2倍、純利益は2.7倍と高成長を維持した。

ところが、同日のエヌビディアの株価は、前日終値比6.4%安の117・59ドルで終了した。一時7.1%安まで下げる場面もあった。

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売り上げが1年で2倍以上、純利益も同じく3倍近くに拡大し、しかもそうした業績が市場予想を上回ったにもかかわらず、株価が下がった。その理由は、市場が「もっと高い成長」を期待したからだ。

私は、投資家が完全な投資依存症の末期症状に陥ったと考えている。

エヌビディアの時価総額は、2兆9656億ドルで、1ドル=145円で換算すると430兆円だ。昨年の日本のGDPが593兆円だから、エヌビディアの時価総額はその73%を占めている。

たった1社の半導体メーカーの価値が、日本のGDPの4分の3を占めることの異常さを誰も指摘せず、倍々ゲームの業績拡大にも満足しない。そんな投資家の態度は、すでに「狂気」と言ってもよい状況なのではないか。

1630年代にオランダで世界初のバブルであるチューリップバブルが発生したとき、チューリップの球根1つに数千万円の価格がついた。

冷静に考えたら、誰でもおかしいと思うだろう。しかし当時、その価格に疑義を唱えた人はほとんどおらず、むしろ「もっともっと上がる」とほとんどの人が考え、庶民は借金までして球根投資に邁進した。そしてバブル崩壊で、オランダ中が破産者になっていった。

ただ、当時でも心の中で、「こんな値段がつくのはおかしい」と考えた人は少数だが存在していた。その人たちが抱える「王様は裸だ」という心の叫びが、球根バブル崩壊の引き金をひいたのだ。