落合博満氏、次期西武監督候補に急浮上 中日の中南米外国人獲得ルート強奪で狙う「一挙両得」

2017年1月の中日GM退任後はフリーの解説者に転じ、プロ野球の第一線から身を引いた落合博満氏が、中日と絶縁し、2度目の監督復帰に舵を切った。

落合氏の監督復帰の発端となったのが、中日ドラゴンズが7月25日にバンテリンドームで初開催するOB戦「DRAGONS CLASSIC LEGEND GAME2024」だ。中日の機関紙『中日スポーツ』の創刊70周年記念事業で歴代の竜レジェンドたちが勢ぞろいする。

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ところが、球界史上唯一の3度の三冠王で、星野竜の4番で活躍。引退後は中日の監督としてリーグ優勝4回、日本一1回の大功労者である落合氏の名前はどこにもなく、スッタモンダしている。

監督は権藤博氏と谷沢健一氏が務め、OB会長の小松辰雄氏、副会長の山﨑武司氏、山本昌氏、元監督の谷繁元信氏、矢野燿大氏、今中慎二氏、岩瀬仁紀氏、小笠原道大氏など総勢約60人が出場する。

「オファーがあれば、会って話は聞きます」

「落合氏をマネジメントする息子の福嗣氏によれば、参加の打診どころか、案内さえなかったと。落合氏はこれに激怒し、身内の集まりで金輪際、中日には協力しない。もう一度、(他球団で)監督に復帰すると宣言したそうです」(スポーツ紙記者)

落合氏は自身のYouTube『落合博満のオレ流チャンネル』でも監督再登板について触れ、「オファーがあれば、会って話は聞きます。条件によっては考える」と明言していた。

その発言が示すように、落合氏の元には、ある球団からオファーが届いているという。その球団こそ5月26日に松井稼頭央監督が休養し、渡辺久信GMが監督代行に就いた西武ライオンズだ。

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ここ数年、西武は浅村栄斗(現楽天)、秋山翔吾(現広島)、森友哉(現オリックス)、山川穂高(現ソフトバンク)と主砲が立て続けに他球団へFA移籍した。

逆に言えば、低迷の原因が「主砲の流出」とはっきりしているだけに、打開策は打ち出し易い。

そこで西武球団は、発想の転換を図った。手駒は減ったとはいえ中村剛也、栗山巧、外崎修汰らが残っており、伝統の山賊打線は健在だ。

しかし放置すれば、彼らもいずれはFAで他球団に持っていかれかねない。

「いっそのこと、FA資格を得る前にトレードし、若い有望選手を獲って育てればいいと。西武が必要としているのは、優れた指揮官ではなく、シビアに血の入れ替えができる改革請負人。それが落合氏。余人をもって代え難い」(同・記者)

森繁和氏、辻発彦氏の協力が不可欠

落合氏は中日監督の就任時、球団の資金力に配慮し、「補強は必要ない。現有戦力を10%底上げしたら優勝できる」と宣言して、1年目に優勝した実績も持つ。西武球団は、そこに期待しているのだ。

落合氏はライオンズOBではないが、西武球団と太いパイプを持つ。中日の監督時代にヘッドコーチに招聘した森繁和氏は、西武ライオンズの初代ドラ1選手。二軍監督やコーチで落合中日を支えた辻発彦氏も西武OBである。

落合氏のGM時には、作戦コーチだった辻氏を西武の要請に応じてライオンズの監督に快く送り出してもいる。

「落合西武は森氏、辻氏とのセットが前提です。森氏に期待するのが助っ人外国人の獲得、編成部門のトップ。現在の選手、コーチ陣を熟知する辻氏は番頭役の一軍ヘッド、渡辺監督代行はGM専任。仕込みは、すでに始まっている」(同)

そして、立浪和義監督の構想から外れた中日・ビシエドの獲得だ。

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元キューバ・ナショナルチームの主砲で、MLBのホワイトソックスで活躍。中日でも2018年に打率3割4分8厘、26本塁打、99打点を記録するなど、「4番・ファースト」で活躍した。

しかも、今季から日本人選手扱いとなり、助っ人枠から外れ、使い勝手は抜群にいい。

森氏は中日コーチ時代の2004年から毎シーズン、ドミニカを拠点にカリブ海諸国を訪れ、独自の中南米人脈を切り拓いた。ウッズ、ブランコ、ゲレーロ、マルティネスなどを発掘し、ビシエドもその一人。自ら渡航して中日入りさせた選手で、思い入れは強い。

しかし、今季の中日はファースト中田翔、サード高橋周平で固まり、ビシエドは開幕から二軍で調整。5月16日に一軍へ昇格し、本塁打を放つと、6月9日に再び登録を抹消されたが、スラッガーとして健在ぶりをアピールし、交流戦後のトレードに備えている。

西武にとっては渡りに船だが、釣り合う交換要員がいない。ビシエドの年俸は3億5000万円。金銭トレードとなると、今季の中日在籍分を差し引いても1億円超が必要。容易に手が出ない。

落合監督招聘で主砲獲得へ

それを可能にしたのが、来季の落合監督招聘だ。新体制への先行投資と捉えてビシエドを獲得すれば、落合氏の盟友・森氏は積み残した宿題を解決できる。“将を射んとする者はまず馬を射よ…”だ。そうすることで、西武は落合氏の監督招請を優位に運べる。

今季の西武の不振は、山川の代役に期待した新外国人アギラー(年俸2億1000万円、前アスレチックス)、コルデロ(年俸1億円、前ヤンキース)の当て外れに行き着く。それぞれベネズエラとドミニカ共和国の出身だが、草の根的に無名の若手有望選手を発掘し、1億円の予算で3選手を獲得する森氏のスカウティングスタイルとはワケが違う。

西武が「オレ流」に変われば、今後はプエルトリコ、キューバ、ベネズエラから安価でポテンシャルの高い助っ人を安定的に調達できる。新政権は落合氏、西武球団共に一挙両得となるわけだ。