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日本文化である『銭湯』が絶体絶命の危機!? 天然ガスの高騰で店舗数が激減…

(画像)KPG-Payless/Shutterstock

鎌倉時代が始まりとされる日本独自の文化で〝ふれあいの場〟としての役割も担っている銭湯が経営危機に追い込まれている。昨年2月、ロシアのウクライナ侵攻による燃料費高騰でガス代が高止まりしたためだ。

今年2月、東京都墨田区にある『押上温泉 大黒湯』の公式ツイッターで1月のガス料金「172万1826円」と記載された領収書が公開された。


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「大黒湯は平日午後3時から翌午前10時までの19時間オールナイト営業です。一般銭湯の約2.5倍の営業時間ですからその分、燃料費は上がる。一般銭湯のガス代は月60万円程度。2年前は約30万円でしたから2倍も高くなっている」(全国公衆浴場業生活衛生同業組合連合会の関係者)

ロシアのウクライナ侵攻以降、天然ガスは高騰。パイプラインでロシアからEU諸国に送られるLNG(液化天然ガス)の2020年1月の月間平均価格は、100万BTU(英国熱量単位)当たり3.63ドルだった。しかし侵攻後の22年8月は70.04ドルと20倍近く急騰した。

「日本の場合、主な輸入先はカタール、インドネシア、ブルネイなど。EU諸国と比べ日本は大打撃を受けていないのに、ガス会社は料金を数回にわたり値上げした」(国際ジャーナリスト)

店舗数はピーク時の10分の1以下に…

結果、各大手都市ガス会社の23年3月期連結決算は、東京ガス、大阪ガス、東邦ガス、西部ガスなど軒並み大幅な増収増益になった。また、天然ガス事業に力を入れている三井物産は最終利益が総合商社初の1兆円超えを果たしホクホクだ。

「銭湯料金は物価統制令によって、都道府県知事が決める統制価格になっているため、事業者の判断で値上げすることができない仕組みとなっている。天然ガス高騰の恩恵に与ったガス会社や総合商社などが、銭湯に利益を還元するしか生き延びる道はありませんよ」(銭湯ライター)

68年に全国で1万7999軒あった銭湯も、22年はわずか1865軒に減少。

「新潟県はピーク時に400軒以上あったが、今では17軒ですからね」(同)

銭湯文化を守る〝戦闘〟も時には必要だ。

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