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北朝鮮・金正恩委員長も「暗殺」に戦慄!イラン核開発のエース襲撃の手口

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11月27日、イラン国防軍需省高官で、核開発の国内権威とされる物理学者のモフセン・ファクリザデ氏が、首都テヘラン郊外で何者かに襲撃され、搬送された病院で死亡した。

イラン革命防衛隊に近い「ファルス通信」によれば、用意周到に計画されたわずか3分間の暗殺劇で、殺害には遠隔操作による自動式機関銃が使用され、無人で行われたという。

イランの国防・外交を統括する最高安全保障委員会のアリ・シャムハニ事務局長は、国営テレビに対して「首謀者はイスラエルで、在外の反体制派組織も加担した」と述べている。

「次期米大統領のジョー・バイデン氏が、イランとの核合意に復帰すると表明したことを受けての犯行です。その首謀者については2通りの見方があり、1つは、反体制派に近いファクリザデ氏を目障りとするイラン当局が、イスラエルの犯行に見せかけて粛清したという説。同時に制裁解除を求めて、バイデン氏に恭順の意を示したのです」(国際ジャーナリスト)

イラン犯行説の根拠としては、ファクリザデ氏がすでに過去の人物であり、亡くなっても現在の核開発に支障がないことが挙げられる。現在、イラン原子力機構のリーダーは、米マサチューセッツ工科大学卒のアリー・アクバル・サーレヒー氏で、ファクリザデ氏の暗殺は、反体制派学者への警告の意味があるのだ。

「もう1つは、イランの核開発に打撃を与えるため、イスラエルがモサド(諜報特務庁)を使って暗殺したという説。イランが核武装すれば中東の軍事バランスが大きく崩れ、同地域で唯一の核保有国であるイスラエルにとって、最大の脅威となるからです」(同)

北朝鮮の核技術がイランに流れるのを阻止?

イスラエル犯行説の根拠は、その手口の鋭利さもさることながら、同国がファクリザデ氏の行動を継続的に監視してきたことが挙げられる。2013年2月には、ファクリザデ氏が北朝鮮の核実験を視察した疑惑が報じられており、かねてからモサドは、北朝鮮の核技術がイランに流れることに神経をとがらせていた。

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は2018年4月、イランの核開発に関する記者会見で、ファクリザデ氏を「イラン核計画の父」だと説明し、「この名前を覚えていてください」と暗殺予告にも似た発言をしている。

「マレーシアのクアラルンプール国際空港で金正男氏が暗殺されたときも、モサドは事件発生前から、北朝鮮工作員の全動向を把握していたと言われます」(軍事アナリスト)

イランの核開発に関与していた物理学者が暗殺された事件は、ファクリザデ氏が初めてではない。10年から12年にかけて、明らかになっただけで3人の物理学者が殺害され、1人が行方不明となっている。綿密な計画、タイミング、殺害手段などから、すべてモサドが関わっていたとみられ、これもイスラエル犯行説の根拠になっている。