来年1月、バイデン新政権で国務長官に起用されるアントニー・ブリンケン氏は、過去、北朝鮮に対する強力な制裁を主張してきた人物だ。今年9月のインタビューでも、金正恩朝鮮労働党委員長を「世界最悪の暴君の1人」と表現するなど、その強硬姿勢に変化は見られない。
イラン革命防衛隊の精鋭「コッズ部隊」を率いて、中東全域で秘密工作を展開してきたカセム・ソレイマニ司令官が、年頭に「リーパー(死に神)」と呼ばれる米軍のハイテク無人ドローン攻撃で、殺害された記憶はまだ生々しい。
正恩氏は当時、しばらく姿をくらますほど米軍の攻撃を恐れていましたが、今回のファクリザデ氏の暗殺でも、正恩氏をはじめ朝鮮人民軍のミサイル部隊を率いる高官たちは、枕を高くして眠れないだろう。
「正恩氏が心中穏やかでないのは、核兵器の設計図が頭に入っている人物を狙われたらお手上げだからです。寧辺原子力研究所の李弘燮元所長と党中央委員会委員の洪承武副部長は、以前から米国のブラックリストに載っており、正恩氏もこの2人を含めた技術系出身の官僚を重要視して、密接な関係を築いています」(北朝鮮ウオッチャー)
李氏と洪氏は16年1月、北朝鮮が水素爆弾と主張する4回目の核実験の後に、正恩氏からメダルを授与された。その2カ月後には、ICBMへの弾頭模型を視察する正恩氏に、そろって随行している。まさに、核・ミサイル開発における中心的な存在だ。
バイデン政権発足時に何らかのアピール!?
北朝鮮は来年1月、5年ぶりの朝鮮労働党大会を開くことを公言しているが、それを受けて同月下旬に、最高人民会議を招集することを決定した。党大会と人民会議では、バイデン政権発足に対して何らかのアピールを行うとみられる。
「新大統領の就任式は1月20日、正恩氏の生誕が1月8日であることから、10月に続いて、また閲兵式(軍事パレード)を開催するという見方もある」(同)
バイデン新政権には、北朝鮮の核を廃棄ではなく軍縮、つまり北朝鮮を核保有国として認めるのではないかとの懸念もある。ブリンケン氏も軍縮という言葉を使っているからだ。
しかし、北朝鮮の核保有に反対する勢力は、米国内に間違いなく存在する。トランプ氏の大統領任期が1カ月以上あることから、北朝鮮への「強烈なオプション」がまだ用意されているかもしれない。
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