七五三の撮影希望者も激減…苦境に立つ「写真スタジオ」~企業経済深層レポート

例年であれば、子どもの健やかな成長を祈念し、各地の神社などを詣でる七五三参りが盛んな頃だ。その七五三に欠かせないのが、写真スタジオでの記念撮影だが、今年は新型コロナウイルスの影響で写真撮影業界が大打撃を受けている。

帝国データバンクの調べによると、今年の10月までに写真撮影業の倒産は20件発生。この数字は、過去10年間で最多だった2010年、13年に並ぶことから、今年の通年では過去10年で最悪となる可能性が高まった。

「00年代に入ると、急速に普及したデジタルカメラやスマートフォンの影響で、現像やプリント需要が減少。プロカメラマンに依頼する撮影自体も減った。そのため、写真撮影業界はビジネスモデルの見直しを迫られたのです」(写真業界関係者)

大手民間信用調査会社、東京商工リサーチの資料を見ても、写真業界410社の売上高は、ここ数年で大きく落ち込んでいる。17年度は約2005億円だったが、18年度は1907億円(前年度比4.8%減)、19年度は1820億円(同4.5%減)と、毎年約5%ずつ減少。20年度は新型コロナの深刻な影響もあり、大幅減が避けられない。

しかし、それにもかかわらず、なんとか写真撮影業界は踏ん張ってきた。その背景を経営コンサルタントが解説する。

「ここ数年で徐々に持ち直した写真撮影スタジオも増え、紆余曲折あるものの、どん底から復調する兆しが見えかけていました。そのキーワードが〝ハレの日〟需要です」

多少お金をかけてでも記念写真を残したいという親心

ハレの日需要とは何なのか。それは冒頭にも記した「七五三」や「成人式」「結婚記念写真」などの撮影だという。現代は少子化傾向が強まるばかりだが、実際は、以前よりも子どもにかける教育費や衣料費、食費などが総じて高くなっているのだ。

団塊の世代が生まれた1947~50年(昭和22~25年)の出生数は、年間260万人以上と飛び抜けていた。団塊の世代が親になった71~74年(昭和46~49年)頃も、団塊ジュニアが年間200万人前後も誕生している。しかし、近年では19年の出生数が86万4000人と、極端な少子化傾向だ。

「子どもが少ないことは、逆にハレの日には多少お金をかけてでも、記念写真を残したいという親心に通じる。そんなニーズを写真スタジオが巧みにくみ取り、子育て世代にアピールすることに成功。デジカメやスマホの普及が進んでも、写真そのものが付加価値の高い商品として受け入れられたのです」(同)