バイデン新政権が北朝鮮へ強硬! 金正男氏の息子“切り札”金漢率擁立へ

19年2月、ベトナム・ハノイで第2回米朝首脳会談が開催されたが、その5日前、スペインの首都マドリードにある北朝鮮大使館に、反北朝鮮組織「自由朝鮮」を中心とする襲撃グループ10人が侵入し、北朝鮮の暗号などの機密を奪った。当時のトランプ政権は「自由朝鮮」を資金面で援助していたとみられ、少なくとも2人のCIAエージェントが、襲撃グループに含まれていたという。

「自由朝鮮」は17年2月、マレーシアのクアラルンプール国際空港で暗殺された金正男氏(金正日総書記の長男で正恩氏の異母兄)の長男、金漢率氏の身柄を保護しているとされ、正恩氏の独裁政権打倒を目標に潜伏活動を続けている。

「漢率氏は11年、ボスニア・ヘルツェゴビナ南部のインターナショナル・スクールに留学していた16歳のときに、初めてメディアに登場しました。卒業後、13年にパリ政治学院に入学し、さらに16年からオックスフォード大学の大学院に入学する予定でしたが、中国の治安関係者から『暗殺の危険があるためマカオ(中国の特別行政区)に留まるように』と説得され、やむなく進学を断念した経緯があります。そして、17年に父親の正男氏が暗殺されたのです」(前出の北朝鮮ウオッチャー)

米国メディアは、その漢率氏がCIAに身柄を引き取られ、台湾(中華民国)を経由して米国に逃れた可能性があると報じた。

金正恩を悩ます「血統問題」

「米誌『ニューヨーカー』が、正男氏の暗殺後、漢率氏一家(母と妹)をマカオから救出した『自由朝鮮』のリーダーたちの証言を掲載しました。それによると、漢率氏一家は現在もCIAの庇護のもと、首都ワシントン近くの州で暮らしているそうです」(米国在住の日本人ジャーナリスト)

いまだ儒教文化が色濃く残る北朝鮮では、その家の長男は絶対的な存在である。金日成主席の長男・金正日総書記、その長男・金正男氏、そして、その長男・金漢率氏というラインが、もっとも正統的な「白頭山血統」なのだ。

この「白頭山血統」とは、北朝鮮において歴代最高指導者を神格化するための用語で、同国の白頭山が金日成主席の生誕の地であり、革命の聖地とされていることに由来している。

漢率氏に比較すると、正恩氏と妹の与正氏(党第1副部長)は、母親が敵対階層である「日本からの帰国者」で、しかも韓国済州島出身のため、血統の正当性では大きく見劣りしている。正恩氏、与正氏ラインは、実のところ傍流にすぎないのだ。

来年1月20日に発足するバイデン新政権が、北朝鮮の「複雑な親族関係」という問題にどう切り込むのか、新たな展開を迎える米朝関係に注目したい。

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