北朝鮮の“女帝”金与正へ権力禅譲! 兄・正恩から着々と…

与正氏は特に外交分野で、正恩氏に比肩するような発信を繰り返しており、実質的なナンバー2兼外務大臣と見なす声もある。また、10月10日に開催された朝鮮労働党創設75周年を祝う軍事パレードをはじめ、党行事の統括を担い国政全般に関与している。

「金正恩体制が与正氏に対して、外交責任者としての箔付けを行っていることは明白で、最重要課題である対米交渉の前面に立つのなら、現在の肩書ではあまりに軽い。来年の党大会で、どれだけ出世するのか注目です」(前出・北朝鮮ウオッチャー)

与正氏は7月10日に発表した談話の中で、「年内に米朝首脳会談を開くべきではない」としながらも、「金委員長は違う判断をするかもしれない」と強調していた。これは独裁国家である北朝鮮において、かなり異例の発言だ。

北朝鮮という国は、個人独裁の要「最高綱領10大原則」に規定されているように、建国者である金日成主席につながる系譜を持つ者だけが、国を領導する権利と資格を持っている。にもかかわらず、与正氏は「金正恩がどう判断するかは別として、年内の米朝首脳会談には反対」と明言したのだ。最高指導者ではない人物による談話としては、まさに前代未聞である。

トランプ再選に期待をかけていた北朝鮮だが…

「与正氏は同じ談話で『金委員長は、トランプ大統領の活動(大統領選)で必ずいい成果があることを願う、という自身のあいさつを伝えるようおっしゃった』と、正恩氏のトランプ支持を明らかにしていた」(元大手紙ソウル特派員)

その一方で、北朝鮮はバイデン氏を罵倒してきた。朝鮮中央通信は昨年の報道で、バイデン氏が正恩氏を「独裁者」「悪党」「暴君」などと中傷したとして猛烈に反発。返す刀で、こうしたバイデン氏の主張を「俗物の詭弁」「狂犬の断末魔のあがき」と、こき下ろしている。

「北朝鮮がトランプ再選に期待をかけたのは、物別れに終わった米朝首脳会談のリターンマッチを願っていたからです」(同)

また、米大統領選のさなかに「与正氏が特使として米国を訪問する」という情報も浮上していた。当然のことながらトランプ再選が前提だったので、もはや話は立ち消えになっている。

「共和党のトランプ政権は、北朝鮮政策でさしたる成果を上げていません。しかし、かつてバイデン氏が副大統領を務めていた民主党政権下では、オバマ前大統領が北朝鮮の人権問題に口を挟み、さらに同国が多くの国際法を犯している証拠を突き付けている」(同)

正式にバイデン大統領誕生となれば、北朝鮮に新たな制裁を科す可能性がある。突かれると痛いところだらけの北朝鮮だが、与正氏は米国の追及からどう逃れるのだろうか。

【画像】

Alexander Khitrov / Shutterstock