21年4月には傘下のANAセールスを会社分割の上、旅行事業はマイレージの運営などを担う「ANA X」と統合し、のべ3600万人いるマイレージ会員の顧客データを活用し、旅行商品の情報を会員に提供していく。
また、来春の社員報酬3割カットに加えて、家電量販店のノジマや高級スーパーの成城石井、各地の自治体などの外部企業10社へ、12月までに100人程度、来春には400人以上の社員を出向させて人件費を抑える。
「将来的には飛行機が飛ばせなくても収益を上げられるよう、新たなプラットフォーム(顧客基盤)事業を進め、保険や食品、広告などを新規事業として伸ばす方針だという」(同)
コロナ禍であえいでいるのはANAだけではない。再建後は順調な歩みをみせていたJALも、現状は苦しい。シンクタンク関係者が解説する。
「JALも21年3月期の純損益が、2400億~2700億円になる見通しを発表した。ANAほどではないにしても過去最大となる赤字で、前年が480億円の黒字だっただけにダメージは大きい」
これまでの最大の赤字は、10年3月期(10年1月に破綻したため、4~12月までの9カ月間)の1779億円。今年度から会計基準を変更したので単純比較はできないが、これをはるかに超える水準となる。
コロナ不況で転職もままならず…
JALも当面のコロナ不況対策として、コスト削減と投資抑制の2点を挙げている。
「コスト削減については、人件費や広告費用の削減で1000億円、投資抑制については、航空機への投資を半減させることで900億円、合計で1900億円の〝止血〟で乗り切りたいと躍起になっています」(同)
かつてない窮状が浮き彫りになる中、航空会社の社員が嘆く。
「出向の話はまだないが、そんな話がきたら社に戻れるのかどうか心配です」
某航空会社のCA(客室乗務員)も表情を曇らせる。
「将来的に多くのCAが、コールセンターに配属されるという話もあります。その場合、仕事へのモチベーションが続くか心配です。苦労して入社したのに…」
この半年間で転職希望者も増えているが、コロナ不況はさまざまな業種に大ダメージを与えており、転職自体がままならない人も多いという。
日本では新型コロナの第3波が到来しつつあり、欧州ではイギリス、フランス、イタリア、スペインで、連日1万人を超える感染者が報告されている。雲間から一向に光は見えてこない。
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