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神に捧げる祭! バリで体験した神聖儀式~原田龍二の『不思議な世界』

原田龍二
原田龍二 (C)週刊実話Web

前回の続きです。

2003年、『世界ウルルン滞在記』(MBS/TBS系)のロケでバリ島へ行き、ジェゴグという楽器を使った音楽の格闘技〝ムバロン〟に挑戦することになりました。手の皮がベロンベロンにむけながらも練習に励み、いよいよ本番を迎えます。ところが当日は、朝から土砂降り。ムバロンをやる予定の広場には、勝敗を決めるはずの聴衆すらいません。雨がやまないなら延期になるかもしれない、という話が聞こえてきました。しかし僕は翌日、帰国しなければならないのです。このまま帰ることになるのだろうか…、そんな不安が胸をよぎりました。

取りあえず待機をして1時間半。周りがざわついてきたのでふと意識を向けてみると、係員に付き添われた老女が広場の真ん中に佇んでいます。実はこの老女、シャーマンだったのです。祈りを捧げてくれたのでしょうか、30分後くらいに雨がやみました。

いよいよ、ムバロンが始まります。周辺で雨をしのいでいたらしき人々が現れて、広場を囲みました。形式としては、各グループがそれぞれ演奏をして、戦いが終わると司会の人が広場に登場します。そして、どちらのチームがよかったかを聴衆に聞き、その反応で勝敗を決めている様子。〝音楽の格闘技〟と言われているわりには、勝敗はどんぶり勘定で決まるんだなと思いました。僕の感覚では、格闘技というよりは、お祭りのように見えます。

勝敗を超える関係を築けた

うちのチームは試合では勝ったものの、優勝はできませんでした。僕は試合後に酸欠状態でぶっ倒れてしまい、意識がもうろうとしていたくらいなので、試合中の記憶もあまりありません。それくらい体力を使うため、演奏できるのはみんな一度きり。優勝チームは、各勝負の観客の反応で司会が判断したようでした。

僕にとっては、優勝という栄誉を超える収穫があったような気がします。一緒に戦ったチームメートとの絆…、音楽の格闘技と言われるムバロンに出場したこと、そのためにジェゴグという楽器に僕が挑戦したことで、心がつながったんだなと。

この期間中、僕は演奏者の家に居候させてもらっていました。その人のご家族と一緒に食卓を囲んだり、1日の間に何度もお供えをしてお祈りを捧げたり、川遊びをしたり、田んぼでドジョウを捕ったりしたことで、絆が生まれたのだと思います。練習では厳しく指導をしてくれる人が、生活に戻ると僕を子供のように受け入れてくれました。言葉が全く通じない状況でも、現地の方に僕なりのアプローチをすることで、勝敗を超える関係を築けたのです。それが重要なんだと、改めて感じました。

〝音楽の格闘技〟と言われていますが、僕には神聖な儀式のように思えます。ジェゴグで演奏する音楽は、神に捧げているんだな、と。本当に貴重な経験ができたと、実感したロケでした。

原田龍二
1970年生まれ。ドラマやバラエティーで活躍する一方、芸能界きってのミステリー好きとして知られ、近著に『ミステリーチェイサー原田龍二の謎のいきものUMA大図鑑』がある。現在、『バラいろダンディ』(MX)で金曜MCを担当。YouTubeチャンネル『ニンゲンTV』を配信中。

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