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バリ島の奇祭!“音楽の格闘技”ムバロン~原田龍二の『不思議な世界』

原田龍二
原田龍二 (C)週刊実話Web

2003年、『世界ウルルン滞在記』(MBS/TBS系)のロケでバリ島へ行きました。

東南アジアにはガムランやケチャなど、いろんな奉納音楽・舞踊が存在します。「バリ島でジェゴグという楽器を使った、音楽の格闘技と言われる〝ムバロン〟に挑戦してほしい」と制作スタッフからオファーされました。滅多に会えない民族の居住地へ行って仲良くなるというロケが多い僕にとって、ひとつの目標に向かってチャレンジした企画は今のところ、これだけです。

ジェゴグは、ガムラン楽器のひとつ。巨大な竹で作られた木琴のような打楽器の上に乗り、バチで叩いて音を出します。竹は太さや長短がバラバラで、それによって音の変化をつけます。この演奏を、2時間くらい続けるのです。叩いているといつの間にかトランス状態になってしまう、不思議な楽器でした。

ムバロンはチームを組んで戦うとのことで、同じチームの方たちと練習することになりました。滞在期間は1週間。そのうち練習に取れるのは4日間です。バチは握るところが木で、先にタイヤみたいなものがついていて、形状的にはキノコに似ていました。バチ自体に、そこそこの重さがあります。これを握り過ぎたせいで練習中からすでに手の皮がベロンベロンにむけ、バンテージを巻いて練習を続けました。

大会の本番当日は朝から土砂降り…

ムバロンは〝音楽の格闘技〟。いったい何で勝負するんだろう、と不思議でした。答えは、音楽のボリュームとグルーヴなのだとか。勝敗を決めるのは聴衆です。ずいぶんはっきりしない戦いだな、と感じました(笑)。しかも対戦相手が誰なのかは、ギリギリまで分からない。毎日練習していながらも、メロディーを覚えるだけで1日が終わってしまい、対戦相手のイメージはできないし、夕方になればチームのメンバーと一緒に素っ裸になって近くの川で水遊び。不思議に思うような習慣を共にするのです。

夕食を食べた後、深夜になったらバイクで田んぼに出向き、ドジョウを捕ってきます。朝になると、「これを食べることでお前の精神はジェゴグに向かっていくんだ」と説明されたキノコを食べさせられます。何だかよく分かりません。

練習の最終日、いよいよバチを握ることすらおぼつかなくなってきました。バチと手をテープでグルグル巻きにして、離れないようにします。その姿を見たディレクターに、「ボクサーみたいだな」と笑われました。

大会の本番当日、朝から土砂降りです。大雨の中を移動して、「こんな広い所があったのか」という広場に数チームが集まりました。ただこの天候だけに、取りあえず待機することに。雨がやまないなら延期になるかもしれない、という話が聞こえてきました。しかし僕は、翌日に帰国しなければなりません。ここまで練習したのに…一抹の不安がよぎります――。(つづく)

原田龍二
1970年生まれ。ドラマやバラエティーで活躍する一方、芸能界きってのミステリー好きとして知られ、近著に『ミステリーチェイサー原田龍二の謎のいきものUMA大図鑑』がある。現在、『バラいろダンディ』(MX)で金曜MCを担当。YouTubeチャンネル『ニンゲンTV』を配信中。

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