コロナ禍で困窮するラーメン屋…あの有名店にも淘汰の波~企業経済深層レポート

コロナ禍による不況は国民食とも言うべきラーメンにも飛び火し、その屋台骨を揺さぶっている。今年は9月末までにラーメン店の倒産が34件発生(帝国データバンク調べ)し、すでに過去最多の2019年(36件)に並ぶ勢い。各店は通販などで生き残りを図ろうとしているが、その道のりは平坦ではない。

「かつてラーメン店は、景気の影響を受けにくい業種と言われていた。また、場合によっては数百万円の投資で、熟練した技術を必要とせずに開店できるとされた。しかも、当たれば年商10億、20億の企業になることも夢ではない。そのため人生大逆転、一発勝負を懸けて、新規店が参入する傾向にありました」(ラーメンチェーン経営者)

経済産業省の経済センサス活動調査(2016年)によると、全国のラーメン店は約1万8000店。現在はさらに増加し、2万店前後と推計される。それだけに、次々にオープンする新規店との過当競争が激化していたが、今年はさらにコロナ禍で来客が一気に減り、多くの店が厳しい経営状態に陥っているという。

コロナ不況の例としては今年3月末、福岡市長浜地区の豚骨ラーメン店『長浜将軍』が、45年の歴史に幕を下ろした。

“横浜家系”の老舗『六角家』が…

「長浜は全国屈指のラーメン激戦地。近年の『長浜将軍』は、ライバル間競争で押され気味となっていた。ピーク時(02年8月期)は約3億6000万円もあった売上高が、昨年は約2億1900万円にダウン。そこにコロナ禍で追い打ちをかけられ、今年2月からインバウンド(訪日外国人旅行客)も全滅して立ち行かなくなった」(地元のラーメン店経営者)

一方、関東でも全国的に知られた店が破産した。横浜家系ラーメンの老舗『六角家』(横浜市)が、9月に横浜地裁より破産手続き開始決定を受けたのだ。

「豚骨しょうゆ味の『六角家』といえば、横浜家系ラーメンを代表する有名店です。ただ、今回の破産は17年にオーナーが体調を崩し、店を閉店していたこともあって、コロナと直接関係がないとも言えますが、業界全体が厳しい状況下で、象徴的な破産であることは間違いありません」(ラーメン評論家)