コロナ禍で困窮するラーメン屋…あの有名店にも淘汰の波~企業経済深層レポート

倒産ではないが、大手チェーンが赤字に陥るケースも目立ってきた。博多ラーメン店の『一風堂』を展開(国内外293店舗)する力の源ホールディングス(福岡市)は、コロナ禍による客足減少などで、20年3月期の損益が2億2000万円の最終赤字に転落した。

「これまで右肩上がりで業績を拡大し、25年までに国内外600店舗の達成を目指していたが、今後はコロナ禍をにらんで軌道修正を迫られるでしょう」(飲食店コンサルタント)

また、惜しまれつつ閉店した店も多い。サラリーマンのメッカ、東京の新橋駅前で20年近く営業を続けてきた『後楽本舗』は、8月28日に店を畳んだ。豚骨しょう油味のスープにストレートな細麺の「岡山中華そば」が名物だった。

「多い日には1日400杯から500杯のラーメンが、飛ぶように売れた。しかし、テレワークが浸透したこともあって、外出自粛要請が解けても客足はパタリ。あっという間に閉店です」(同)

業績悪化に悩む業界だが、もうひとつ、ラーメン店が直面する課題が「1000円の壁」だ。

「経営が苦しくなると単価を上げざるを得ないが、一般的な顧客は〝ラーメン1杯1000円以内〟という固定観念でガチガチ。高価なラーメンでは顧客が逃げるばかりで、結果、値上げもできずに追い込まれていく」(前出・ラーメンチェーン経営者)

デリバリーとの相性が悪いラーメン

年商10億円なんて夢のまた夢。行列ができる一部の店以外、大多数のラーメン店は薄利多売で、自分の睡眠を削り、従業員数を削り、やっと儲けを出しているという。

「だったら『ウーバーイーツ』や『出前館』のように、デリバリーをやればという声もあるが、昭和の時代とは違って、現在はラーメンの出前自体にニーズがない。麺が伸びるのを懸念するからです」(同)

こうした経営環境の中、大手チェーンは拡大路線を転換し、急ピッチで赤字店舗の閉鎖を進めている。幸楽苑ホールディングス(福島県)は1月に51店の閉店を発表したが、その後、8月に発表した2021年3月期第1四半期(4~6月)決算では、前年同期比77店の減少で417店と修正している。また、東海地方を中心に『スガキヤ』を展開するスガキコシステムズ(名古屋市)も、322店舗の約1割にあたる30店舗を来年3月に閉店する予定だ。

一方で明るい話題もある。1976年に閉店した東京ラーメンの元祖『浅草来々軒』が、10月14日、44年ぶりに新横浜ラーメン博物館で復活した。関係者らは将来、浅草での再オープンも見据えているという。

窮地のラーメン業界だが、なんとかコロナ禍をしのぎ、日本人の〝庶民の味〟を守り抜いてほしい。