丘みどり、歌唱中に「俺が歌うから聞いとけ」下積み時代の苦労と初主演映画で挑んだ“歌の演技”

丘みどり(C)週刊実話

夢を追う主婦への共感と怪しいプロデューサー

──良子がレッスンを受けて、徐々に歌が上手くなっていくという“歌の演技”ができるのは、さすが丘さんだと思います。良子のような夢を持った主婦の方って、実はけっこう多いんじゃないかと思います。
丘 たくさんいらっしゃいます。私のファンの方にもいらっしゃって、相談されたことがあります。カラオケ大会でたびたび優勝されている方で、旦那さんもお子さんもいるけど、歌手デビューしないかという話があって、迷っていらっしゃると。これはお返事の仕方が難しいですよね。その方の人生がかかっている究極の選択ですから。

──その点で、この映画は一人の主婦が「究極の選択」をした一つの参考例になるかもしれませんよね。
丘 映画の内容が発表された後、その方から「これは私の映画ですか!?」というお手紙をもらいました(笑)。

──良子の運命を握るプロデューサー・ポール北沢を川﨑麻世さんが演じられていますが、実にいいキャラクターです。本物の名プロデューサーなのか、稀代の詐欺師なのか、最後までハラハラさせられました。
丘 私がデビューした20年前ぐらいの演歌界には、一見しただけでは本当にプロデューサーなのかどうか分からない人がたくさんいましたよ。実際、お金を預けたけどデビューできなかったとか、CDだけ送られてきたといった話を、当時よく聞きました。

──ポール北沢は、かなり写実的なキャラクターだということですか。驚きました。
丘 すごくリアリティーがあります。私は警戒心が人一倍強いタイプですけど、それでも20代の頃に「僕が東京で一番の演歌歌手にしてあげるよ」って言われていたら、覚悟を決めてついて行ったかもしれませんね。もっと売れたい、てっぺんに行くんだって思って選択を間違えてしまったら、私は今ここにはいないかもしれません。

──ご無事で本当に良かったです。劇中では、飛び込み営業というか“流し”をするシーンがあります。丘さんも経験ありますか?
丘 やりました。本当に映画のまんまで、飲み屋さんで歌ったときにはちょっとセクハラ的なこともあったりしました。あと、歌自慢の方が集うカラオケ喫茶では、私が歌っていると音を止められて、「俺が歌うから聞いとけ」なんて言われたり…。

──プロの丘さんの歌を勝手に止めて自分が歌う? すごい人がいたもんですね。
丘 紅白歌合戦に出場するまで、そういうことはありましたね。紅白に出た後は「みどりちゃん、待ってたよ」とおっしゃっていただけるようになりました。

──一人の主婦が夢を追う物語でありながら、演歌界のリアルさを描いている作品でもあるんですね。
丘 演歌界を知ってる方が見ると、「あーあるある」ってなると思います。