世界王者より"一人の男"でありたかった――辰吉丈一郎「負けても逃げへん」魂の生き様【スポーツ界"男気列伝"】

家族だけは絶対に裏切らない

辰吉には、もう一つ語り継がれる男気がある。家族への愛情だ。

「妻・るみさんとは若い頃から苦楽をともにし、世界王者になっても、その関係は変わらなかった。試合に勝った日も、負けた日も、帰る場所はいつも家族だった。次男・寿以輝(じゅいき)もプロボクサーとなり、父の背中を追い続けている。辰吉は必要以上に技術論を語らない。『好きにやれ』。それが父としての流儀で、息子の人生まで自分色に染めようとはしない。その距離感にも、辰吉らしい優しさがあった」(在阪スポーツ紙記者)

人気者になっても変わらなかった

世界王者ともなれば、高級車やブランド品をひけらかしても不思議ではない。だが辰吉は、昔から付き合いのある人たちを大切にし、地元・大阪でも気さくに接することで知られていた。

テレビでもリングでも、作られた"スター"にはならなかった。いつも自然体。だから今でも「ジョー」と親しみを込めて呼ばれる。ファンとの距離が近いのは、人柄が変わらなかった証拠でもある。

男気とは、最後まで自分を曲げないこと

昭和にはケンカが強い男が英雄だった。また、平成にはお金を持つ男が成功者と呼ばれた。だが、辰吉丈一郎が教えてくれた男気は、もっと単純だ。

何度倒されても立ち上がる。逃げない。嘘をつかない。自分の人生を自分で決める――世界王者のベルトよりも、多くのファンが辰吉丈一郎を愛した理由はそこにある。

リングの上では拳で語り、リングを降りれば生き様で語る。浪速のジョーは今もなお、日本ボクシング界が生んだ"最後の反骨漢"なのである。(敬称略)」

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