田原俊彦より早かった“洋楽カバーデビュー”!鹿取洋子『ゴーイン・バック・トゥ・チャイナ』の衝撃【スージー鈴木の週刊歌謡実話第50回】

井上鑑のブレイクを予感させた編曲

あとタイトルの「チャイナ」を見て、「え? アイドルのくせに中国の歌でデビュー?」と驚かれるかもしれません。しかし当時は、人民服風のファッションのイエロー・マジック・オーケストラや、ゴダイゴ『ガンダーラ』(’78年)、「シルクロードのテーマ」という副題の付いた久保田早紀『異邦人』(’79年)など、ちょっと中国や東洋系の曲がトレンドだったのですよ。

そんな『ゴーイン・バック・トゥ・チャイナ』ですが、今聴いても、そのギラギラしたディスコサウンドは、とてもかっこいい。ここらあたりは、編曲を手掛けた井上鑑の手腕でしょう。

実はこの原稿のためにディーゼル(とやら)の原曲を初めて聴いたのですが、テンポが遅くて遅くて、もう回転数を間違ったと思うほど、どんくさい曲なのでした。鹿取洋子版、というか井上鑑版の方がぜんぜん洗練されている。

そして、翌’81年、井上鑑は、寺尾聰『ルビーの指環』のアダルトなアレンジで、日本レコード大賞の編曲賞を受賞(さらに楽曲は大賞に)、一躍時の人となるのですが、そういうブレイクの導火線のような曲が、この曲なのです。

なお鹿取洋子は「日本歌手協会」の第53回歌謡祭にも出演するそうですよ(10月29日夕公演)。歌手活動にゴーイン・バック!

「週刊実話」10月29日・11月5日号より

スージー鈴木/音楽評論家

1966(昭和41)年、大阪府東大阪市出身。『9の音粋』(BAYFM)月曜パーソナリティーを務めるほか、『桑田佳祐論』(新潮新書)、『大人のブルーハーツ』(廣済堂出版)、『沢田研二の音楽を聴く1980―1985』(講談社)など著書多数。