「ギブアップしたのに止めてくれない」蝶野正洋が明かす“武藤敬司とのデビュー戦”とレフェリーの真価【蝶野正洋の黒の履歴書】

蝶野正洋(C)週刊実話Web

3度のタップに込められた教え

名古屋で行われたアジア競技大会が閉幕したけど、相次ぐトラブルや運営側の不手際が取り沙汰されていた。ひたむきに挑んでいる選手たちに対して、運営やジャッジがミスをすると競技に水を差してしまう。どんなに機械やAIが発達しても、誤判定問題はなかなか解消されないね。

新日本プロレスでも「疑惑のジャッジ」がファンの間で物議を醸している。ゲイブ・キッド対ドリラ・モロニーの試合で、レフェリーが3カウントを叩いたのに曖昧なロープブレイクという判断になり、そのまま試合が続行。観戦していたお客さんからすると、不可解な印象になってしまった。

プロレスのレフェリーというのは、勝敗を見極めるだけでなく、試合の流れを止めてもいけないから難しいんだよ。俺のデビュー戦は対戦相手が武藤(敬司)さんで、レフェリーは柴田勝久さんだった。試合が始まって5分も経ってないくらいに俺が逆エビ固めを決められて、もう耐えきれなくなった。俺はお客さんの前でギブアップするのが恥ずかしかったから、武藤さんと柴田さんにしか分からないくらいの小さなアクションでタップしたんだよ。

そしたら柴田さんは俺の近くまで顔を寄せて「まだまだ」って、試合を止めてくれない。もう訳が分からないよ。それからまた逆エビ固めを決められてタップしたんだけどダメで、3度目でようやくギブアップを取ってくれた。あれはキツかったし、戸惑ったね。

俺も武藤さんもデビュー戦で、下を向きながらひたすら手を取ったり足取ったりの地味なレスリングをやって、それがお客さんにまったく伝わってない。つまり、プロとしての試合ではなかった。下手クソでも、とにかくがむしゃらにぶつかって精魂尽き果てるなら1分で終わってもいいんだけど、そういう戦う姿勢も見えてない。だから、試合を止めなかったんだろうね。

まぁ、俺自身も本当にそれが理解できたのは、それから何年も経ってメインイベンターになったくらいだったけどね。それとは真逆になるけど、レフェリーは何かアクシデントが起こったときには速やかに止めるということも求められる。

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