日本シリーズ伝説の10選【前編】3連敗から4連勝の奇跡…球史に残る“5つの死闘”

④「巨人vs近鉄」奇跡の4連勝! 
 巨人を覚醒させた「巨人はロッテより弱い」発言の裏側(1989年)

1989年の日本シリーズは、藤田元司監督率いる「読売ジャイアンツ」と、仰木彬監督率いる「近鉄バファローズ」が激突した、球史に残る最大の大逆転劇だ。

戦いは、悲願の日本一に燃える近鉄が圧倒。エース阿波野秀幸らの好投で怒涛の3連勝を飾り、誰もが近鉄の初の栄冠を確信した。しかし、第3戦勝利後のヒーローインタビューで、近鉄の加藤哲郎投手が放ったとされる「巨人は(パ・リーグ最下位の)ロッテより弱い」という報道が、眠れる巨人のプライドに火をつけた。

屈辱に震えた巨人は第4戦、香田勲男の完封勝利で息を吹き返すと、完全に流れを掴み取る。続く第5戦では原辰徳の満塁本塁打が飛び出し、一気に3勝3敗のタイへ。

運命の第7戦、駒田徳広が加藤から先制のソロ本塁打を放った際、ベースを回りながら「馬鹿野郎!」と叫んだシーンは今も語り継がれるハイライトだ。

結局、巨人が3連敗からの4連勝という史上3度目の大奇跡で日本一を奪取。たった一つの言葉が戦況を180度変えたこのシリーズは、言葉の持つ魔力と短期決戦の恐ろしさを証明した最高のドラマとして語り継がれている。


⑤「西武vsヤクルト」ID野球の限界 
 怪物・清原和博が知将・野村克也の「ささやき」を粉砕した夜(1992年)

1992年の日本シリーズは、森祇晶監督率いる王者「西武ライオンズ」と、野村克也監督率いる「ヤクルトスワローズ」が激突した、平成最高の頭脳戦にして泥沼の肉弾戦だった。マスコミは野村監督の「ID野球」が王者を崩すかに注目したが、現場はそんな奇麗事ではない“殺気”に満ちていた。

初戦の杉浦享による史上初の代打サヨナラ満塁弾でヤクルトが先制すれば、西武も秋山幸二の超人的な本塁打と決死の激突生還でやり返す。一歩も引かぬ攻防は4度の延長戦を数える潰し合いとなった。

そのハイライトは、野村監督が仕掛けた清原和博への「ささやき戦術」だ。捕手・古田敦也を使い、私生活の動向まで揺さぶりに使った野村ヤクルトに対し、清原は第6戦で執念の同点本塁打を放ち、その不敵な笑みで知略を力でねじ伏せてみせた。

運命の第7戦、延長10回の激闘を制したのは西武のエース石井丈裕の完投劇。4勝3敗で王座を守った森監督の冷徹さと、敗れてなお「最高の野球ができた」と不敵に笑った野村監督。データと、それを超える男の意地が極限まで交錯したあの7日間は、今もファンの脳裏で輝きを放っている。

【日本シリーズ伝説の名勝負10選・後編】へ続く

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