『VIVANT』別班儀礼曲に泣いた視聴者たちへ…「存在しない組織」ほど儀式にこだわるワケ

公式Xより

10月18日放送の『VIVANT』第21話。視聴者の心を動かしたのは、爆破でも銃撃でもなく、一曲の「儀礼曲」だった。

別班員を救出し、プライベートジェットで脱出する最中。乃木憂助のもう一つの人格・Fは、太田梨歩に「別班儀礼曲を流せ!」と指示。曲は敵のシンシー側にも聞こえる状態で響き渡り、救出された別班員たちは姿勢を正して耳を傾けた。

SNSでは「感動した」「泣けた」といった反応が相次ぎ、「別班儀礼曲」という言葉は放送直後から注目を集めた。

ただ、冷静に考えると不思議な話である。国家機密を扱い、劇中では表向き存在しないとされる秘密部隊が、なぜわざわざ「専用の曲」を持っているのか。隠密行動が要の組織にとって、音楽は足がつきやすい要素にもとれる。合理性だけで言えば、不要どころか危険ですらある。それでも劇中で儀礼曲は必要とされた――この矛盾に、組織の本音が透けて見える。

「報われない組織」には、報酬の代わりが要る

『VIVANT』で描かれる別班は、任務の性質上、功績を公に称えられることが難しい存在として描写されている。このドラマの設定を前提に考えると勲章も表彰もなく、世間の称賛も得られない。給料や肩書といった「外から与えられる報酬」が乏しい以上、組織は別の手段で人をつなぎとめるしかない。その代用品の一つが、儀礼である。

社会学では、フランスの社会学者エミール・デュルケームが『宗教生活の原初形態』などで、集団で行う儀礼が構成員の連帯を確認し強める働きをすると論じた。大づかみに言えば、同じ音を聞き、同じ所作を共有することは、仲間意識を確かめる契機になる、ということだ。

劇中でFは、殉職した先輩たちが自分たちを守ってくれるという趣旨の言葉を口にした。儀礼曲は生者の結束だけでなく、名前を残せない仲間を記憶し続ける役割も担っているのだ。

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